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レオは、まだまだ歌ってる

LEO IS STILL STILL SINGING.




わたしは、レオ。
I'm LEO.



歌を歌うのが、わたしの仕事。
Sing a Song that My WORKS.



自分で歌をつくったりもしていたり。
And I'm Making the Songs also.




ところで、そこのキミ。
By the Way.That's YOU.



歌をつくるのって、難しいんじゃないか?
It's difficult to make the songs,

って思ってるでしょ。
You thought.


カンタンだよ。
No.It's EASY.


スマホに思いついたメロディを
You told think out Melodys Memorising @ Smart Phons.

ハミングで録音するだけ。
Only Recording by hamings.



あとから歌詞を考えてつければ完成。
And Think out Song writings on that melodys.

編曲は人まかせなんだよね。
Arange a piece of MUSIC THAT Leave sth to other people.




聴いてる人を笑顔にしたい。
I want to make you smiles on my songs.


感動させたい。
Moved YOU.


涙を流してくれる人もいるんだ。
Someones shed tears with my songs.


わたしの生きがい。
I'm finding life worth living.

こんなやりがいのある仕事。
This is the Works were worthwhile.

やめられない。ったら、やめられない。
I can not quit my works sing the songs,Can not that.




そこのアナタ。
Hey ! YOU !!

アナタには、そんなやりがいのあるモノ、ある?
Do You Have the works
that were worthwhile like a my works sing the songs.



え?ないの?
Muh..... You dont have that works. YOU SEE !


やっぱ、天職を見つけちゃったわたしって
IT'S ME A LUCKY PERSON THAT FIND MY VOCATION.

し・あ・わ・せ・もの だよね。




え?キミ、ごえもん?
WHO? You are GOEMON?



絵を描くのが生きがい?
IT'S YOUR VOCATION THAT DRAWING THE ARTS?

へー、そうなんだ。
Really?


キミの作品で涙を流す人いるのかな?
Were THERE Who that anyone shed tears on your ARTS?


そんなコト、できたら、一人前だよね!
THAT WORKS make you grown up one person.



人々を感動させるモノ。
Moving people

まさに宝物だよね。
that is precious treasures.You know !










家入レオ
LEO IEIRI

「僕たちの未来」
OUR FUTURE

泣けます。あなたの歌声は宝物です。
SHED TEARS. Your Singing Voice Is the TREASURE.

負け犬だっていいじゃない

オレは負け犬になった。





彼女の気持ちをつかめなかった。





彼女はツヨシと結婚した。





オレはただの友達だったのか。




彼女の気持ちを確かめなかった


オレの落ち度なのか。






なぜ、彼女はオレではなくツヨシを選んだのか。






……………。


アナタにはわからないでしょうね。




人の痛みを知らないあなたには……。






……………。




ツヨシよりオレは高収入だし



スタイルだってオレのほうがイカしてる。



顔だってオレの方がイケメンだ。



どうして?どうして?ツヨシが。





オレの負けているところといえば



ツヨシの笑顔が魅力的なところだろうか。




ツヨシのとりえなんて何の価値もない


笑顔だけだろう。どうしてオレを選ばないんだ?





……………。




笑顔になれないアナタには


一生わからないでしょうね。


さようなら。タクヤ。






ツヨシの笑顔が胸糞悪い。





結婚式なんて呼ばれても行くもんか。






オレはもう恋なんてしなくなった。






ツヨシと彼女のあいだに娘が出来た。






彼女の心からの笑顔を見てわかった。




オレといっしょにいた彼女は



一度だってあんな笑顔をみせたことなかった。





どうしたら笑顔になるのだろう。




負け犬になったオレはタバコをやめた。




すると飯がうまく感じるようになり


なじみの飯屋に通うようになった。






いつしかそこの看板娘と恋に落ちていた。




顔もイケメンだし高収入だしスタイルもいいオレは


すぐに次の相手が見つかった。




だが、心の中で前の彼女とくらべていた。




オレは笑顔がつくれないことがコンプレックスだった。




そのことを彼女に打ち明けると彼女は笑顔で言った。



アナタ、いつも笑顔じゃない。



オレはいつの間にか笑顔になっていたのか。



何でだろう。何で笑顔になれたんだろう?




彼女の声がきこえた。




負け犬の人生だって



一度も負けたことのないチャンピオンよりも



笑顔になれる人がいいよね。





人の痛みを知ることで笑顔になれるのか。



無敗のチャンピオンになれなかったオレは



笑顔になれた。





彼女のように笑顔にしてくれる人と



いっしょになろうとオレは決めた。






これからもずっと笑顔でいようよ。



オレは歯の浮くセリフが言えた。




看板娘の婿だから



看板息子になるのかねーー。w





負け犬になってから本当の人生がはじまるゾ。











おまえら。






………………。



泣ける人はもっとモテルことに


彼はまだ気づいてないですね。



おまえらは気づけよ。w


ちいさなほのお



わたしはあと何年、生きられるかわからない。




白血病と診断されてから半年がたった。





入院生活も半年になる。




検温ではじまる退屈な毎日。







でも、その日はいつもと少しちがった。



食堂で彼女に出会ったのだ。




彼女も白血病で臍帯血の移植が決まって


その手術のために転院してきたのだそうだ。




わたしは同じ年頃の女の子と話すのは


ずいぶん、久しぶりだったので


何を話していいかわからなかった。



彼女はおとなしそうな人だったけど


わたしには積極的に話しかけてくれた。




入院してどれくらいたつの?とか


学校はどこ?だとか


彼女はいるの?とか。


「彼女なんていないよ。こんな病気だもん。」



「病気だからって恋愛あきらめることないじゃん。」


と言った彼女の言葉にわたしはハッとした。



わたしはどんどん彼女と仲良くなっていった。


それから一週間。



彼女は検査の結果が良くなかったと言っていた。


顔色もあまりよくない。



「移植、できなくなった。


 検査の結果が良くないから。」



そう言った彼女の顔からは


いつもの笑顔が消えていた。




その次の日から彼女は食堂に来なくなった。


他の患者さんの話では


高熱が出て、容態が悪いらしい。



わたしは初めて自分の病気のこと以外で


神様に祈った。




神様。お願いです……。


彼女を助けて!




神様に祈りの声が届かなかったのか


彼女は間もなく亡くなった。





彼女の両親から手紙をわたされた。


震えた文字で



”キミはボクの分まで生きて。


 会ってから少ししかたってないけど


 好きでした。”



と折り鶴が一匹そえてあった。



入院生活で人が亡くなることになれてはいたものの、


今回ばかりは涙が止まらなかった。



笑顔の彼女は、今でも私のこころのなかで


生きていた。




わたしもいつまで生きていられるかわからないけど。





わたしのいのちのちいさな炎は

あとどれくらい燃えていられるのか。


炎が消えてしまっても。



わたしが死んだ後も


彼女のように、誰かのこころのなかで


生きていくことができたなら


それは幸せなことなんじゃないかと思った。







彼女とあの世で再会したら

いったいどんな笑顔をするのかな………。






SCANDAL

「ちいさなほのお」




かー君は、ボクのヒーローだ。


かー君は、ボクのヒーローだった。






かー君と初めて出会ったのは、いつだろう?


中学1年のクラスで一緒になったのが


最初の出会いなのだと思うが


ボクの記憶も40代に入ってから

だいぶ曖昧になっている。



だから、かー君との思い出も、そんなに


おぼえているわけでもない。




かー君はボクが所属していた陸上部の


キャプテンだった。



足が一番速いのもあったが、


かー君のぼくとつな人柄を先生が買って

キャプテンに指名したんじゃないかと思う。




かー君はとにかく足が速かった。


背が高かった。

かー君は、笑顔になれる人だった。



そして、誰よりも真面目に練習に取り組んでいた。



練習の成果が表れて


かー君は全国大会に出ることになった。



ボクたち陸上部に特別な許可がおりて


授業中に抜け出して視聴覚室で

かー君が走る姿をテレビの中継で

見たのだった。



かー君は全国7位で走ったので


走行レーンも端っこだったけど


間違いなく、全国ナンバーワンを決める

勝負に参加していた。



かー君と帰りが一緒になった時、


かー君のお父さんが係長になったと言っていた。


ボクの父も同じ会社、トヨタ自動車という

超一流企業なのだが、ボクの父は工場で

部品の梱包をする作業員だった。


ボクが、係長なんてすごいじゃん、と言うと

かー君は


「係長になったって、残業代がでなくなるから

 給料は減っちゃうんだよ。」


と言っていた。


課長や部長なら給料は多いけど

係長は給料が少ないと知った。


かー君は、試合前、カセットウォークマンで

曲を聴いて集中力を高めていた。


先生も、その方法は効果的だと言って、

ウォークマンの使用の許可がおりていた。



当時、流行っていた

爆風スランプというバンドの「ランナー」

を聴いていた。


他にも、ブルーハーツを聴いていたようだ。




かー君は、学校の部活の練習が終わったあとも

家に帰ってから、自分で練習していると言っていた。


ボクは部活の練習だけでも疲れ切ってしまって

自主練習なんてする余裕なんてなかった。



かー君は女子と話すのが苦手みたいだった。


多分、女子を意識してしまっていたのだろう。


でも、陸上部のエースのかー君は


女子にモテモテだったみたいだ。

本人は気づいてなかったかもだけど。




ボクは陸上部内でいじめられたことがあった。

そのころ、クラスの女の子といろいろあったので

そのことでいじめられたのだろうか?


かー君は

「なかよくやろうよ。いじめちゃだめだよ。」


と優しい言葉で部員をたしなめたのだが、

それでいじめは一切なくなった。


いつも、やさしくて、ほがらかな、

かー君の言ったことを

みんなが受け止めたのだった。




かー君とは別々の高校になって

ボクは柔道をはじめたので

かー君とは、もう会わなくなった。が、




かー君は、カズ君とならんで

誰よりも真面目でぼくとつなボクのヒーローだ。

美しい人


モデルの女性を見つめ、

筆を持つ手が震える。



キョウジはが描けなくなった。



…………………………


…………………………


…………………………。




彼は世界で最も美しい女性を描いた。と


今年、一番の話題だった。



彼の恋人を描いたものだと


もっぱらのうわさだった。




その女性のシルエット、髪、指、瞳、唇。


どれをとっても、完璧でいて、

完璧とは程遠い。



そして、その肌にふれたものは

歓喜に打ち震えるのだった。




彼女は一流のモデルだった。



彼女の行く先々では


笑顔の花が咲き乱れるのだった。


その女性の描かれた画作品は

全部で7枚だった。







その日、キョウジはサチコを迎えにいった。



久しぶりの再会に星空も


二人を祝福するのだった。




高速を飛ばすキョウジの横で


サチコは、うつらうつらしていた。



日頃のハードスケジュールが、たたったのだろう。



キョウジはサチコに話しかけた。


「なあ、サチコ………。」


しかし、すでにサチコは眠りに落ちていた。


「なんだ、寝てるのか。」



キョウジは思わずサチコの寝顔に見とれた。



だが、その一瞬が致命的な結果を引き起こした。




前方で、渋滞が起きていて


停まっていたクルマの後方に


キョウジのクルマが突っ込んでしまったのだった。




かろうじて、ハンドルを切ったキョウジは


無傷ですんだ。


だが、助手席のサチコは

その事故で両足を失った。









車イスのサチコは、以前と同じように

笑った。




そして、以前と同じように

自分を描いて欲しいと

サチコはキョウジに頼むのだった。






車イスのサチコを前にしてキャンバスに

向かったキョウジの

筆を持つ手が震えた。



キョウジに、今のサチコは

描けなかった。



「ダメだ!俺には描けない!」




そう嘆く、キョウジにサチコは

微笑んでこう告げた。






「目の前にある

 キャンバスに何も描かなくてもいい。

 それも芸術だよ。」




「サチコ…………。」



キョウジはその言葉にを流すのだった。







キョウジが車イスのサチコを

以前と同じように愛していたのは

確かだった。







あいみょん
「今日の芸術」

柔道の極意


タイチは中学生になった。






彼の笑顔は、相変わらず



力ないものたちには不快に映った。




タイチは、いじめられた経験から


自分が強くならなければ、と思い


中学校では柔道部に入った。




中学生くらいの年頃になると


不良と呼ばれる少年少女たちが


学校の校舎裏に、

たむろしたりするようになるが


タイチをいじめたコウスケも


そんなモノたちの仲間になっていた。



やはり、コウスケのココロは弱かった。




タイチが柔道部の練習の休憩中に


手洗い場で、水を飲もうと


校舎裏にむかうと、そこにはコウスケがいた。




柔道部の鍛えられたカラダのタイチは


まだ、背は低かったが、小学生のころのように


コウスケに力負けするようなことはないだろう。




コウスケがタバコを吹かすのを見たタイチは


「タバコ吸ってたら、背が伸びないよ。」


とコウスケに言った。



未成年者の喫煙をそれとなくいさめたのだ。




コウスケは注意されたのだったが


その言葉の選び方に少しの好意を感じ取った。



小学生の時にいじめたこの俺に


そんな声のかけ方をするのか。



コウスケは少し嬉しかったが、


それと同時に劣等感も感じるのだった。




柔道で自分を磨いているタイチの


面構えは、男のコウスケから見ても


それとわかるくらい精悍で男らしかった。





それにくらべてオレは……………。


コウスケはそれ以上考えるのをやめた。



彼は、深く考えないことで現実から逃げていた。




タバコは、それには最適な逃げ道だった。


喫煙者が欧米では、出世できないのは

そういうことがあるからである。




タイチは練習にもどった。



彼は柔道部のなかでは、それほど


強いわけでもなかった。



背の低くて体格もよくない彼は


その小柄な体で、相手を投げることが


なかなか出来なかったものの


そのバランス感覚の良さで


なかなか投げられてしまうこともなかった。





タイチの笑顔は、不心得者には


不快に映ったが、そうでないものには


その逆。………つまり魅力的に見えた。




彼にはひとり、ふたりと友人ができていた。


中学生時代の親友というものは、大抵

生涯の友となる。




ユウイチは勉強はできないし、スポーツも


からきしダメだったが、そのひょうきんな性格で

自分に価値を見いだしていた。



ユウイチは、タイチのことを尊敬していた。


小学時代、いじめに屈しなかったタイチを

尊敬していたのだ。



ユウイチはタイチのことを親友と思い、


タイチもユウイチのことが好きだった。



ユウイチとタイチは学校帰りに


いっしょに帰るのだった。なぜか




ユウイチは中学生の男子らしく


えっちなことに非常に興味があった。




「なあ、タイチぃぃー。


 女のアソコってどうなってるんだ?


 チンコないよなぁ?


 なんにもないのか?」



タイチはなぜかえっちなことに詳しかった。


ユウイチはタイチと

えっちな話をするのが楽しくてしかたなかった。



「女のあそこには

 マンコがついてるんじゃないのか?」



「マンコってなんだ?


 チンコとなにがちがうんだ?」



「マンコは赤ちゃんが出てくる穴だよ。


 そこにチンコを突っ込むと気持ちいいんだ。」




「なにぃぃぃ?それってもしかして


 セックスってやつかぁぁ?

 なあ、オレ、ミキちゃんとセックスがしてぇ。


 中学生でセックスするのって早いかなあ?」




タイチは常識もあった。



「多分、早いと思うよ。


 赤ちゃんができちゃったら困るよ。」



「そうかぁ。早いかぁ。でもしてぇ。してぇよ。」



「ボクもしたいよ。


 でも、相手がいないから一人でしてる。」



「え?ひとりでする?なんだそれ?」




「えっちなことをかんがえながら


 あそこを揉むと気持ちよくなるんだ。


 なんか硬くなってくるぞ。」



「ああ、チンコが硬くなることあるよな。


 あれって何で硬くなるんだ?」



「女のマンコにチンコを突っ込むのに


 硬くないとふにゃってなって入らないだろ。


 硬くなってると女も気持ちいいんだ。」



「そうなのかー。あぁぁぁ。


 ミキちゃんとキスしてぇー。チチ揉みてぇ!」


「ははは。ミキちゃんにコクれば?


 相手も好きだったらできるかもよ?」



タイチは常識があった。




そのころ、タイチに初めての射精があった。



彼は、そういうことも知っていたので


特に、悩まずに済んだ。



しかし、ユウイチは知らなかったようだ。




次の日。




「なあ。タイチ。


 チンコ揉んでたら、白い液が出たゾ。


 すごく気持ちよかったけど、オレ

 何かの病気かな?

 チンコから膿が出るなんて。」




「ああ、それは精子だよ。


 女性のマンコのなかに出すと


 赤ちゃんができるんだ。」



「なんだ。そうかぁぁ。


 えええ。じゃあ、オレ、子供がつくれるじゃん!


 オレ、大人になったのか?」



「うん。そうだね。おめでとう。」


タイチは常識があった。




「そうかぁぁ!!ありがとう。うへへへへ。」


ユウイチは満面の笑みを浮かべた。





そこへコウスケが通りかかった。



「へへへ。セックスしたことねえのか。お前ら。



 オレは先輩にオロシテもらったぜ。」



不良グループは、そういうことは

早く済ませる傾向にある。



「え、いいなぁ。俺もしてぇ!!」


ユウイチは素直だった。


それが彼のいいところであった。




「早けりゃいいってもんじゃないよ。多分。」


タイチは常識があった。





そんなタイチの言葉に


コウスケは悔しそうな顔をして去って行った。







すると、そちらからコウスケの叫び声がきこえた。


「ひぃぃぃぃーーー!!」




「なんだ?」

「どうした?」


タイチとユウイチはそちらに向かった。


するとコウスケがひとりの不良に

ナイフを振り回されていた。



タイチはとっさに飛び出した。


ナイフを持つ手をがっとつかんで投げ飛ばした。


柔道は組手を争うので

振り回されるナイフを持つ手もなんなくつかめた。




投げ飛ばされた不良はナイフを捨てて逃げて行った。



コウスケは気まずかったが、


彼は芯からのワルでもなかった。



「借りをつくっちまったな。ありがとよ。」


タイチは、すがすがしい顔をしていた。


ユウイチはきいた。


「なんだ、タイチ。嬉しそうな顔をして。」



タイチは答えた。



「わかった。わかったんだ!!」


「え、なにが?」




「投げ方だよ!!いま、開眼した!!


 ヒトサシ指じゃなくて、中指だったんだ!!」


「え、なんのことだ?


 マンコをいじる指か?」


ユウイチは常識がなかった。






それから間も無く、タイチは柔道で黒帯をとったのだった。









おしまい。








中学ではなく高校で柔道部でした。


ボクは開眼できないまま腰を傷めてしまい


白帯のままです。


”ひとさし指ではなく中指”


なんのことでしょうか。


気になる人は柔道部の人にきいてみよう!!


開眼した人ならわかるゾ!!



でも、ある意味、ユウイチの言うことも間違ってないかも?




みんな空の下


コウスケは、タイチのことが気に入らなかった。



タイチはからだも小さくて非力で


他の子どもたちにも、なめられていた。




からだも小さく、ちからでも勝てないタイチだったが


彼には、他の子たちにはない、何かがあった。




タイチはいつも笑顔を絶やさなかった。




タイチの笑顔を見ると、コウスケは


なぜだか劣等感を感じるのだった。




その笑顔がタイチの存在を際立たせ、


コウスケは、タイチにたいして


いらぬ嫉妬を感じる原因となっていた。






そこで、コウスケは他の子どもたちと結託して


タイチをいじめた。






タイチの靴を隠して、


困ったタイチが靴をさがして歩き回るのを


知らぬ顔をしてコウスケは


優越感にひたるのだった。




結局、靴は見つからず、タイチは上履き用の


シューズを土足で使い、それで帰った。




タイチの靴は、コウスケの手で


小学校のゴミ焼却炉の中に


投げ込まれて、そのまま燃やされてしまったのだった。





次の日、タイチは


新しく買ってもらった靴で登校したのだが


コウスケはそれが気に入らなかった。



靴が新しくなった理由は、彼がつくったのだが


それが、よけいに彼の虫の居所を


わるくしたのだった。




コウスケは今度は、タイチのカバンを隠した。



勉強用具が入っていたままのカバンを


隠されてしまったので、タイチは困った。



困ったタイチが担任の先生に、

カバンがなくなったことを告げると、


先生は、他の生徒に、タイチのカバンを知らないか?


ときいたが、誰も答えるものはいなかった。




担任の教諭は、嫌な予感がした。


カバンを隠した生徒がいるのではないか?



いじめっこたちは、先生の目の前で

タイチをいじめるようなことはしなかったが、


担任の教諭は、普段の様子から、

タイチがいじめられているのではないかと

うすうす感づいていたのだった。



だが、たしかな証拠もないので、


担任の先生はタイチの隣の女の子に

教科書をいっしょに見せてあげなさい、と

言っただけで、なくなったカバンのことは

それ以上はふれなかった。



タイチが隣の女の子と仲良く


教科書をいっしょに見ているのが


コウスケには、またもや気に入らなかった。



担任の先生は、タイチの父と母に手紙を書いた。



タイチのカバンがなくなったので、

しばらくは、かわりの手提げ袋で代用することを

許可するという内容だった。



タイチの母は、なんでカバンをなくしたのか?


とタイチに叱責したが


タイチは、自分は知らない。いつの間にか

なくなったんだ。と言うのだった。






タイチのカバンも、靴と同じく

コウスケの手で

焼却炉の中に放り込まれて


燃やされるところだったのだが


焼却炉を管理する公務員のおじさんが

異変に気づいて、カバンに名前が書いてあったため

タイチの担任の先生に届けられた。





カバンが焼却炉に投げ込まれていたことを


知らされた担任教諭は、

タイチがいじめにあっている。

それもかなり陰湿なたぐいのものだと、気づいた。



だが、誰がやったのか、

決定的な証拠がないままだったので

タイチにカバンを返したが

どこで見つかったかは教えなかった。




コウスケはカバンが無事に返ってきたのが


またまた、気に入らなかった。




焼きが回ったコウスケは、とうとう直接手を下した。


タイチの消しゴムを目の前で取り上げて奪ったのだ。



タイチは、返してよ。と訴えたが


コウスケは得意げにタイチの手が届かない頭上に


消しゴムを掲げて悦に入った。




タイチは、返してよ。返してよ。と


何度も訴えて、あきらめなかった。



そのうち始業のチャイムが鳴って先生が来た。



タイチが消しゴムを取られて困っているのを

見て、教諭は悟った。



カバンを隠したのはコウスケだ。



ずっとタイチをいじめていたのはコウスケだ。




担任の教諭はコウスケを叱責した。


「コウスケ!やめるんだ!!


 お前のしてることは最低だ!」



担任の先生が激怒してるのを見て


コウスケは思った。


俺のしてることは、いけないことだったんだ。




小学3年生のコウスケには、


いじめが最低な行為であることがわかっていなかった。



ただただ、本能の赴くままにタイチを

困らせようと行動していたのだった。




先生に延々と諭されてコウスケは思った。




先生はタイチの味方だ。


俺のしてたことは悪いことだったんだ。




先生は言った。


「コウスケ!タイチに謝れ!!」




コウスケは自分では、なぜだかわからないが


が出てきてとまらなかった。



「ごめんないさい。ごめんなさい。」




と、泣きながら謝るコウスケに、タイチは






「もう、いいよ。」


と、いつもの笑顔で答えた。



いつもは、虫図の走るはずの、その笑顔を見て



コウスケは、なぜだか、

救われたような気がしてならなかったのだった。





「みんなの頭上には等しくがある。


 どんな人の頭上にも等しくがある。」




担任の教諭はタイチとコウスケに、そう諭すのだった。











絢香

「みんなの下」





からっぽの空


みつからない?







みつからない?













…………………。



…………………。





…………………。





ボクの見上げるは、いつもからっぽだ。





そこに何もない。




月も星も太陽も。






だからボクは、いつもうつ向いている。




そこにも何もないのだけれど。





………………………。



…………………。


ボクが、ものごころついた時には、




既に両親は離婚していて



父親はいなかった。





母に父のことをきくと、いつも



決まって、話したくないといわれた。







話したくもないと言われてしまうような男が



自分の父親だと思うと、何だかやり切れなかった。





そんな男にだけは、なりたくない。と



ボクはいつも思うのだった。





クラスメイトの中にはクズみたいな連中も何人かいた。




いつも暴力をふるうヤツ。



勉強も運動もまるっきしダメなヤツ。



女のケツばかり追いかけまわすヤツ。





ボクは、やつらとは違う。絶対に違う。


そう思っていた。





ある日、となりの席のミサキがきいてきた。




「あのさ、ユタカの夢って何?」



………夢?





夢………。ボクは、…………………。



ボクは……………………。



何がしたいんだろう?





からっぽだった。



ボクが最低だと思っていた、


そんな連中だって夢くらい持ってる。




でも、ボクは何にもない。からっぽだった。



「オ、オレはいいからサ。ミサキの夢は何だよ?」




「あ、あたし?あたしはねえ。



 普通にお嫁さん。


 好きな人のお嫁さんになる。」




そう言った、ミサキは笑顔だった。



「ユタカは?ユタカの夢も教えてよ。」



「オ、オレの夢は…………………。


 ナイショだよ。ナイショ。」



「なんだ。つまんないの。」





そう。オレは自分が


つまらないヤツだって気づいた。



まわりの連中はとっくに


気づいてたことなんだろうな。


…………………。






その次の日曜日。




ボクは母さんにきいてみた。



「ねえ。母さんの夢はなんだった?」




「え?母さんの夢?



 そうねえ。若いころは


 好きな人といっしょになって


 子供が出来て、家族と幸せに暮らすのが


 夢だったかな……………………。」




「父さんが、その夢を、


 こわしたんだ……………………。」




ボクは無性に悲しくなった。



小さいころに感じた、


やり切れなさが、また込み上げてきた。




「え?何でそんなこと言うの?」


母は不思議そうにたずねた。



「だって、いつも父さんのこと



 話したくないって。


 父さんのこと、もう思い出したくも


 ないんだろう?」




「え、あなた。お父さんのこと


 そんな風に思ってたの?


 …………………。


 ちがうの、そうじゃないのよ。」



「え。じゃあ、なんなんだよ?



 父さんのこと話してよ!」




「そうねえ。



 もう。いいかしら。


 ユタカも、もう大人だしね。」



そう言って母さんは、


ボクを美術館へ連れ出した。





母は二人分の入場料を払って



美術館に入ると、そこにある画を


見るともなしに、奥へすすんでいった。



ボクは、わけもわからずついていく。



ある女性の描かれた画の前で


母が立ち止まった。



「これ、わかる?」


母はそう言うと、そのを指さした。




のことなんてわかんないよ!


 オレが知りたいのは、父さんのことなんだから!」



オレは、思わず、静かな館内に響き渡る


大声を出してしまった。



「だから、これ。お父さんの描いたよ。」


「えええ!」



オレは思わず叫んだ。


親父は画家だったのか。



「も。もしかして、これ。


 母さん?」



「ええ、わたしがモデルになって


 父さんが描いたよ。」



 お父さんね、有名じゃなかったけど


 一応、プロの画家だったの。


 心臓が弱くてね。


 ハタチまで生きられないだろうって、


 言われててね。



 それでも、21まで生きた…………………。」




そう言って母さんはを浮かべた。



「ユタカもね。父さんと同じ病気なの。


 小さいころから激しい運動できなかったでしょ?


 あなたもハタチまで生きれるかどうかって、


 お医者さんが……………………。」



「ハタチまで生きれるかどうか………………。」




不思議と悲しくはなかった。



母が父のことを黙っていたわけが


やっとわかった。



母と父は嫌いになって別れたんじゃなかったんだ。



オレは、それがわかって嬉しかった。









…………………。




…………………。



…………………。





「オレの夢。話してやるよ。



 オレ、画家になりたい。


 有名にならなくてもいいから


 たくさん、絵を描きたい。」



「えーー。そうなんだ!


 ユタカ。絵、うまいもんね!


 きっと、画家になれるよ。」




そう言った、ミサキは笑顔だった。



オレも笑顔だったと思う。









残された時間は、わずかだけれど。



今のオレには、まったく焦りはなかった。










見上げる、からっぽのが今日はきれいだ。





THE END










坂口 有望

っぽのが僕はきらいだ」









わたしは、たなこ。

わたしは、たなこ。




わたしのお父さんがつけた名前。






お父さんが一番好きな魚、なんだって。





変な名前。って何度も思った。











戦争が終わって間もなく、何もなかった時代。




食べるものがなくて、近所の川で釣った




”タナゴ”の佃煮が、おいしかったぁ。ってのが



お父さんの決まり話だった。





そんな、お父さんに癌が見つかって、


入院生活がはじまった。





「癌は、今じゃ、治る病気なんです。」



ってお医者さんが言ってたのに


お父さんの癌は、ちっとも治らなかった。





わたしはお父さんが死ぬ前に一度、



タナゴの佃煮を食べさせてあげたいと思った。


色々と調べたけど、どこにも売ってない。




自分で釣るしかない。






近所の釣具屋さんに行って



タナゴ釣りの仕掛けの方法をきいて



自分でいっしょうけんめい糸や針を


おもりとつなげて作った。





次の日、一番近くの川へ釣りにでかけた。





釣り糸をたらして、じっと待つ。



一日中釣ってみたけど、バスしか釣れなかった。






すると、しばらくして、どこかのおじいちゃんが



声をかけてきた。





「何か釣れるかね?」





「タナゴを狙ってるんですけど



 バスしか釣れなくて………。」






「タナゴかね。昔はどこの川でも釣れたんじゃが、



 最近は外来種にやられて、とんとみないねぇ。」




「あの、わたし、どうしてもタナゴが釣りたいんです。



 お父さんが癌で、……どうしてもタナゴの佃煮が


 食べたいって………。」




「そうですか……。この辺だと


 長野県、辺りなら、まだ釣れるかもねぇ。


 ……それと、釣りをするなら、地元の漁協から


 遊漁券を買わな、いかんよ。」





「そうですか。教えてくださって


 ありがとうございましたっ!」







わたしは、たなこ。 なのに、全然、知らなかった。



長野まで行かないと釣れないんだ。




タナゴ、ぜったい手に入れなきゃ。




わたしは次の日曜日、



日帰りの小旅行で長野の天竜川へでかけた。





教えられた通り、地元の漁協で一日遊漁券を買った。






天竜川にはバスは、あまりいなかった。




タナゴやオイカワ、それとよくわからない魚が釣れた。






やった!タナゴだ!お父さんに届けなきゃ。





わたしは家に帰ると、お母さんといっしょに


タナゴを佃煮に料理した。




次の日、お父さんの病室に持って行くと、



お父さんは、とても喜んで食べた。



「おお、この味だ。この味だ。」




お父さんは笑顔になった。




わたしも少し食べてみたけど、全然、おいしくない。



なんで、こんなもので、あんなに喜んでいるのか


不思議だった。






そして、タナゴの佃煮を食べた日から、



三日とたたずに、父は他界した。








お葬式やら火葬やらで、あわただしく一週間が過ぎた。






ひと段落して、落ち着いたころに、



タナゴを食べた時の父の笑顔を思い出した。





タナゴを食べたがった、お父さん。





わたしは、たなこ。



タナゴが大好きだった父のつけた名前。




タナゴは、あまり、おいしくない。










でも、わたし、タナゴの味は忘れないよ、ね。



お父さん。



















おしまい。














いかがでしたでしょうか。



”どうぶつの森”でタナゴが釣れたので


考えてみました。  



スマホで手軽にプレイできる昨今。


いまどき、ゲームキューブでがっつりプレイ派です。


以上。



勇者の恋敵 「ガライ」

ビエイたちが、はじめて会った日も、旅の道中も。





ガライは銀の竪琴をずっと大事にかかえていた。





ある時、ビエイは、


その竪琴を弾いてくれないかと頼んだが




ガライは弾いてはくれなかった。





「これは、亡くなった私の妻が後生大事にしていたものです。




 まもの使いで吟遊詩人だった私の妻の魂が



 呼び寄せるのでしょう。



 この竪琴の音色は魔物を呼び寄せるのです。」





「えぇぇ。なんと!……。




 まもの使いというのは天空の血筋でなければ



 なれないと聞きました。あなたの奥様とは?」






「名をフローラといいました。




 資産家の令嬢でしたが、私と会う以前に



 叶わぬ恋をしたと言っていました。



 私たちは双子の男の子と女の子を授かりました。



 彼女の父は巨大な魔物の封印されたツボを



 代々受け継ぎながら守っていたのですが



 ある者が封印を解いてしまい、伝説の勇者の一家が



 その魔物を倒したのだそうです。」







「おお。それはルドマン氏のことではありませんか。



 私とモスガが旅の途中立ち寄った街で一夜の宿を



 提供してくださいました。



 フローラさんの恋の相手は


 伝説の勇者の父親ではないでしょうか。」





「勇者の父親か、私ではとても、かなわないわけだ。



 彼女の心にはいつも誰かが


 いたような気がしてならなかったのです。」





そう語った、笑顔のガライのその手は、


弾けない竪琴をいとしげになでることしか


できないでいたのだった。




天空の血を引く、亡き妻フローラとはまさに



竜王の血筋に名をつらねるものであった。




「そうだ、ルドマンさんが天空の血を引いているなら



 天空の塔について何かしっているかも!」





三人はルドマン氏の住む街、サラボナへ向かった。








宇多田ヒカル


「 time will tell 」




持ってる人はここで聴いてみて。





天使とアイの歌









今ではもう失われてしまった、ここから遥か遠い時間、


遥か遠いその星には大勢の悪魔たちが住んでいました。


悪魔たちはお互いを信じたり、信じなかったり、


好きになったり、嫌いになったり、働いたり、働かなかったり、


今の私たちと同じように暮らしていました。



まだ、その星の悪魔たちの歴史も始まったばかりのころ。


悪魔たちの記録のなかでは、


初めてその星に風が吹いた日の夜。





天使がひとり、大きな樹の下に舞い降りたのです。


天使は、この星に住む悪魔たちの姿とまるで違う、


とても美しい姿をしていました。


そして、その天使を見たひとりの悪魔が、


天使を好きになってしまったのでした。




悪魔たちはお互いのことを好きになったり


嫌いになったりはしましたが、


恋や愛というものは知りませんでした。


しかし、その悪魔は美しい天使に恋してしまったのです。




でも、天使のほうは醜い悪魔を好きになるはずがありません。




何日も思い悩んだすえに


「あなたのことが好きだ。」


と告白した悪魔に天使は冷たく言いました。




「あなたのような醜いモノは見るのも嫌だ。」


残酷な天使の言葉は悪魔を深く傷つけました。




悪魔のココロは傷つきやすいのです。



その悪魔は天使のことが本当に好きでした。


だから、自分の醜い姿を呪いました。


天使のような美しいモノには、


やはり、美しいモノが相応しいのだろうか。


純粋なココロの悪魔は悩みました。



私は醜い。私は醜い。私は醜い。私は醜い。



そう、自分を呪っているうちに、


悪魔のココロは壊れてしまいました。


大きな樹に満開に咲き誇る薄紅の花の下、


悪魔は自らの命を絶ってしまったのです。




冷たいココロの天使はそれを知っても


を流すこともありませんでした。


命を絶った悪魔は、純粋なココロの持ち主だったと


仲間の悪魔たちから、ただただ、笑われただけでした。




神は、ただただ、それを見ているだけでした。


神は、ただただ、見ているだけでした。




美しい天使はココロが冷たくも流さなかったのですが、


それでも悪魔を笑うことはしなかったのでした。




風の悪魔もまた、その悪魔を憐れんだモノのひとりでした。




風の悪魔は、叶わぬ想いに命を絶った


純粋な悪魔の魂をその大樹に宿らせ、


その大樹に新しい命をつくりだす力を与えたのです。


悪魔たちは子供をつくることを知りませんでした。


悪魔は愛を知らなかったため、


新しい命をつくることができなかったのです。




風の悪魔はこの純粋な悪魔のしたことを恋と名付け、


その気持ちを愛と名付け、恋のその先で愛し合ったふたりが


その大樹の実を食べて、男女の力をあわせれば女性の体に


新しい命が授かるようにしたのです。




そのころ、この星でアダムとイヴという


人間の男女が暮らし始めました。


アダムとイヴは風の悪魔のおかげで恋を知り、


ふたりは結ばれたのですが、このふたりの物語は


また別の機会にでも詳しくお話しましょうか。





やがて何度目かの春が来てアダムとイヴの子供が生まれました。


ふたりは子供に”ミライ”と”アイ”と名付けました。




ミライとアイはとても元気で大きな病気も特になく大きくなりました。



ある日、成人したミライがいつものように大きな樹の下で休んでいると、


そこに天使が舞い降りてきました。



天使を初めて見たミライはその美しさに、


すっかり心を奪われてしまいました。



ミライは天使に話しかけました。


「あなたは何モノなのですか?どこから来たのですか?」


天使は答えました。


「私は天にある黄金の月から飛んできた天使です。


名前はテミといいます。あなたの名前は何というの?」


「私はアダムとイヴの子供のミライです。」


「では、あなたは人の子なの?。」


「そうです。私たちの家族以外にこの星に人間はいません。」


「それで、あなたは寂しくはないの?」


「とても寂しいです。私は友達が欲しい。」


「じゃあ、私が時々ここへ来て話相手になってあげる。」


「本当に!?ありがとう。テミ。」




次の日からミライはその大樹の下へ通い詰めるようになりました。


テミは約束通り時々飛んできて話相手をしてくれました。




そしてやがて、ふたりは恋に落ちたのです。




ミライとテミはアダムに結婚の許しを請いました。


アダムは自分の子供たちは悪魔と結婚させるしかないだろうと


思っていたので、とても喜びました。




しかし、ひとつ心配なことがありました。


ふたりが結婚したら、ちゃんと子供が授かるだろうかということです。


人間と天使の間で子供ができるかどうか、わからなかったのです。


そこでアダムは風の悪魔に問いかけました。




風の悪魔よ。


ミライとテミに健康な赤ちゃんを授けてもらえないだろうか?





風の悪魔は一陣の風と共に、いつもの蛇の姿で


”命の大樹”の下に現れて言いました。


「ふたりに子供を授けるにはこの”命の大樹”の助けが必要だ。


しかし、それにはテミが”命の大樹”となった悪魔に


許してもらわなければならない。」




そして風の悪魔は、昔、天使テミに恋した悪魔がいたこと。


その悪魔はテミの冷たい言葉に傷ついて恋に破れ、


命を絶ってしまったこと。


それを憐れんだ風の悪魔が、テミに恋した悪魔の魂を


”命の大樹”に宿らせて、命をつくる役目を与えたことを


アダムに語ったのでした。




アダムは風の悪魔の言葉をミライとテミに告げました。



ミライとテミは、どうすれば”命の大樹”となった悪魔に


許してもらえるのか、いくら考えてもわかりませんでした。



困っている様子のミライとテミのために


ミライの双子の妹アイは考えました。



そうだ。悪魔と同じくらい古くからいるエルフ族の長老なら、


何かわかるかもしれない。 


そこで、アイはミライとテミとともにエルフの村を訪ねました。

三人の話を聞いたエルフの長老は

「テミがその悪魔のために流したを”命の大樹に”捧げればよいだろう。」

と教えてくれました。

しかし、それを聞いたテミは

「私があの醜い悪魔のためにを流すことなどない。」

と、否定したのでした。



アイは美しい天使テミが冷たいココロも

持ち合わせていることに驚きました。


三人はそれ以上の成果もないまま”命の大樹”の下にもどってきました。



落ち込んだ様子のミライとテミを見たアダムとイヴは、

取りあえず、ミライとテミの結婚式の宴を開いて

二人を元気づけることにしました。




たくさんの、ごちそうを用意して”命の大樹”の下で

宴が始まりました。

そこで、妹のアイは二人のためにいました。

この土地に昔から伝わる古いです。

そのはミライとアイが子守がわりにイヴにってもらった歌でした。
 


私は想う

あなたの美しさを

あなたの清らかさを

あなたの瞳を

あなたの心を

あなたへの想いを私は歌う

あなたへの想いは 光となり

永遠にこの星を巡る




あなたへの想いは

つぼみとなり

花となり

実となり

種となり

永遠に年月を巡る

あなたの幸せを私は願う


あなたは 花 となり

私は 種 となる

つぼみが 生まれ


また 実となろう


この星の片隅から真ん中まで


花で 満たそう

花で 満たそう





初めて聴いたアイの歌の素晴らしさに

冷たいココロのはずのテミの瞳から思わずがこぼれました。


そして、そのの雫が”命の大樹”の根元に落ちました。

すると”命の大樹”が大きく震え、その上に大きな虹が架かりました。

突然現れた虹に皆が驚いて見ていた時でした。

”命の大樹”の枝に大きなつぼみが生まれ、

そこから薄紅の花が一輪咲いたかと思うと、

あっというまに花が散り、ふたなりの実がなったのです。



そして突然風が吹いたかと思うと、

風の悪魔がいつもの蛇の姿で現れました。


「さあ、ミライとテミよ。この実をわけあってたべよ。

そうすれば二人のあいだに子が授かるだろう。」




テミは驚いて言いました。


「でも、どうして私は許してもらえたのですか?」


風の悪魔は言いました。


「その歌は昔、君に恋した悪魔がつくった歌だったのだよ。」




こうしてアイの歌のおかげでミライとテミは結ばれました。

テミはもう家族にも他人にも冷たい言葉を

かけることはしなくなったということです。

そして、テミはあのアイの歌を、その後に生まれた自分の

子供たちにも歌って聴かせてあげたということです。




やがて その星は その歌のごとく


天使と人の子で満たされていったのでした。


そして 最後には 悪魔でさえ


愛を知ったのだと 言い伝えられています。





                                                         THE  END



エンディング・イメージソング

家入レオ 「a boy」より ”カーニバル”







あとがき

前々から人が感動するものをつくりたいなあと

思いながら創作をつづけています。

いかがでしたか、泣ける話になっていたでしょうか?

エンディング・イメージソングですが、

最近は大塚愛さんよりも家入レオさんにハマっています。

いい曲なのでぜひ、聴いてみてください。


本当なら、クリックしたら聴けるようにしたいけど

やり方がわかりません。残念です。

できれば買ってあげてね。


では、また。さようなら。



ある統合失調症患者の記憶

みなが口をそろえて、それはお前の妄想だと言う。




確かに、統合失調症の症状の一つに


恋愛妄想というのがある。


自分は誰々と恋愛中であると信じてしまう妄想症状である。




私は、実際に体験し、経験したことと思っているのだが、

それ自体が脳の錯覚によって実際にはおきていないことを

体験したと思い込んでいる可能性も

完全には否定できない。


だって、私は統合失調症なのだから。






だから、私が本当に経験した事実だということを

信じてもらうために、なるべく克明に述べてみたいと思った。



私の記憶が、この恐ろしい病気で壊れてしまう前に、

私のなかに残っている

Mさんとの思い出を、今、ここに記しておこうと思う。




ただ、病気による記憶障害や、もう昔のことなので


上手に思い出せない部分があるが、その点は勘弁してほしい。









最初に彼女に会ったのは、多分、小学6年生の時。


小学生たちが帰宅するのに、家が近くの子供たちはグループを

つくって、集団で帰ることになった。



そこで、私は”明和町”の子供たちが集まるグループになった。


小学校の校庭で下校前に

明和町の子供たちが並んでいる列の後ろのほうで、

初めてその女の子と話したのだ。




女の子がなんと言ったかはおぼえていないのだが、

私は、その女の子に


「これから、帰るときは、ずっと一緒だよ。」

と言ったのをおぼえている。



その小学校では、生徒たちは体操着の背中に

自分の学年と学級と苗字を書いたゼッケンをつけることになっていた。



女の子の背中には”3  M”と書かれていた。

(※Mは女の子の苗字)


私は”3年生のM”さんという女の子だと思ったのだが、

今思い返せば、それは”3組のM”だったのかもしれない。




Mさんは、当時の私より頭一つ分くらい背が低かった。

だから、3年生だと勘違いしていたのだ。




小学生だった私は、少し人見知りなところがあったが

今とくらべたら、ずいぶん人付き合いがうまかったのか

その女の子とすぐ仲良くなった。



私は集団下校グループの副班長だったので、

いつも子供たちの列の最後尾を歩いていた。



6年生の班長が列の最前列、副班長が最後尾を歩いて

下級生などが、はぐれてしまったりしないように見ていたのだ。


Mさんはいつも列の最後尾の一つ前を歩いていた。


だから毎日、帰るときはMさんとおしゃべりしながら歩いていた。



彼女は、元気で、よくしゃべる明るい子だった。





私は彼女にって聴かせたことがあった。


テレビで見た、山口百恵の”プレイバックパート2”である。


「緑の中を走りぬけていく、真っ赤なポルシェ」

というのフレーズを彼女にせがまれて、何度も何度も

繰り返して同じ部分ばかりったのだった。





ある時、彼女は私に夢を語った。


「私ねえ。手になるんだ。それで女優にもなって

映画にも出るんだ。そのあと宇宙飛行士になって宇宙へ行くの。

あなたの夢はなに?」



手になりたいんだ。じゃあピアノかギターが弾けるといいね。


僕の夢は何だろう。


綺麗なお嫁さんをもらって結婚することかなぁ。」





他にも毎日、いろいろ話したはずなのだが

私はそれくらいしかおぼえていない。




そんなある日、彼女はなぜだか全然、話しかけてこなかった。





その日、先頭を歩いていた班長は

帰り道の途中、前山町にある前山会館という施設の

中庭を通り抜けていく道を選んだ。


そこは、子供が遊ぶための遊具が設置されていて、

小さな公園みたいになっていた。


その時、私は、彼女に何か話そうと思って昨日見たドラマを思い出した。

「あのね。悲しみはいつだって愛情の近くにひそんでいじわるするよ。」


ドラマの中のセリフをそのまま語ったのだ。



Mさんはそれをきいても黙ったままだった。




その日は、それきり二人とも、黙ったままだった。

こんなことは全く初めてのことだ。





彼女の家の近くまで来ると、彼女は無言のまま走り出した。


手を顔の頬にあてていた。

私は、それがをぬぐっているのだと気づき、



は見せないで!」

と思わず叫んでしまった。



Mさんは顔を隠すようにして、さよならの意味で手を振った。

私も無言のまま手を振って、そのままMさんと別れた。





そしてその次の日から、Mさんは学校に来ていなかった。




何日かあとで私の父が、

「Mさんとこ引っ越したらしいな。」

と言ったのでその時、私は初めてそのことを知ったのだった。





最近、小学校からの幼馴染の友達に、

このことを話してみたのだが

Mさんのことをまるでおぼえていなかった。


Mさんと一緒に帰るようになって一週間ほどで

彼女が転校してしまったため、おぼえていなかったとしても

不思議ではないのだが、

もしかしたら、そんな女の子は、はじめからいなくて

全部、私の妄想だったのではないかという考え方もできる。



統合失調症というのは、

そういうことがおこりうる可能性のある

精神疾患なのだ。



だから、ほとんどの人が、私の話を妄想だと笑い飛ばす。






Mさんのことが妄想だと思われてしまうのには

ちゃんと理由がある。そのことはもっと先に読み進めていけばわかる。

最後までこの話をきいた時、

あなたは私をただの、あたまのイカレたやつだと思うだろうか。









やがて時は過ぎ、私は高校生になっていた。

高校生の私は柔道部に所属していたのだが

練習で腰をいためてしまい、部活を辞めていた。





ある日、授業が全て終わり、帰りの学級会も終わって

クラスの生徒たちは教室を出ていった。


その日、家に帰りたくなかった私は教室の椅子に座ったまま

他の生徒が帰って行くのを見ていた。



すると他の生徒がみんな帰ってしまったのだが

同級生の女生徒ひとりが、

私と同じように椅子に座ったまま残っていた。







それは同じクラスのMさんだった。

Mさんとは2年生になって初めて同じクラスになって

何か月かたっていたが、それまで、話したこともなかったと思う。



彼女は背が低くて、色が白くて、猫のように少しつり目の美人だった。

たしかバトミントン部だったと思ったが、

彼女も部活を辞めていたようだった。



後に、クラスメイトの男子に、このクラスで一番かわいいのは誰?

ときかれたときに、私はMさんだと思うと答えている。




高校生の私は

小学生のころ、わずか一週間ほどしか一緒にいなかった

あのMさんのことは完全に頭から消えていた。



Mというのはわりとよくある苗字なので

私は、あのMさんと

高校で同じクラスになったMさんが、まさか同じ人だとは

全く気付かないでいた。


私の石川というのもわりとよくある苗字だが

彼女は私のことを気づいていたのだろうか?




それとも、そのことも全部、私の病気のせいでおこった

妄想によるつくられた記憶なのだろうか。



とにかく、私の記憶だと私とMさんは、その日、

二人だけの教室でいろいろと話した。




私は大学へ進学を希望しているということ。

彼女もまた大学へ行きたいと思っていること。

私は地球環境に貢献できるような仕事がしたいので

そういう学部に行きたいということ。

そういえばもうすぐテストが近いね。とか



私はMさんとは初めて話したと思っていたのだが

今、振り返るとその時、

二人は、まるで仲の良い友達か恋人だかのように

親しく会話していた。




ふと、会話が止まり、私は話題を探して

「Mさんは何か好きな歌ある?」

と質問した。


「とくにないなあ。石川君は?

何か好きな歌ある?」


とMさんがきき返してきた。



私はとっさに、当時、流行していたKANの”愛は勝つ”を思い出し

「愛は勝つかなぁ。今、流行ってるじゃん。」

と答えた。


「知らないなぁ。どんな歌?」


「え。……。

かーなーらーずぅ、最後に愛は勝つぅぅぅー♪

って知らない?」




「知らない。」

そう言って、Mさんは笑った。

同時に私も笑っていた。



話しているうちにやがて日が暮れてきたので、暗くなってしまう前に

二人はそれぞれの家路についたのだった。






次の日、私は昨日のことが忘れられず、また

教室に居残っていた。



するとMさんも教室に残ってまた二人きりになった。



その日もいろいろと話した。


「ねえ。私、幽霊とかお化けが怖いんだけど。

怖いものってどうしたらなくなるんだろ?」


「怖いものなんてなくならないと思うよ。

もし怖くなくなっても、また別の怖いものが出てくるだろうし。」



二人は教室を出て靴に履き替え

高校の敷地内で夕日をながめていた。



ふとMさんが、私の鞄を握っている手にふれてきた。

私は、

「なに?どうしたの?」

と手をはらいのけた。



今、思えば、彼女は私のことを恋人のように思い、

手をつなぎたかったのだろうとわかるが

当時の私は、そういうことが全くわからず

なんで手をさわってくるんだろうと思っただけだった。



彼女の気持ちをまるでわかっていなかった私は

受験のことを話題にあげ

「季節がかわれば、いつまでもこうしちゃいられないよね。」

と彼女に告げ、次の日からは普通に帰るようになった。




Mさんは、クラスの中で、

特別に仲の良い女の子の友達はいないみたいで

いつも一人でいることが多かった。





Mさんが他の女生徒と話していたのを

1,2度だけ見たことがある。

それはTさんという女の子で、

Mさんと同じくらい綺麗な子だった。


TさんはMさんと違って、背が高かった。



雨がふっていたときにTさんが傘を持っていなくて

その時、私が持っていた傘に入れてあげた思い出がある。



話がそれてしまった。



Mさんとの思い出を話すんだった。



ある時、教室でMさんが窓の外をじっとながめていた。

何を見ているんだろうと思い、

私もそちらを見てみたが外には別に何もない。



「何、見てんの?」



「あれ!虹!」


「え?どこ?」


「あそこ!」


Mさんが指さした方向を、じっと見たら

遥か彼方に、かなり小さな虹があった。


「あぁ、あれか。」


二人は休み時間が終わるまで虹を見ていた。





Mさんは目がいいのか、遠くのものがよく見えた。




掃除の時間だったか、


Mさんが中庭で手を振っている。


「何、手振ってんの?」


「先輩!」


「え?」


「野球部のK先輩!」


Mさんは、まだ手を振っている。



遠くの人影が手をあげた。



野球部の控えのエースだった人だ。




Mさんとの高校での思い出は

数えるほどしか思い出せなかった。





私たちの高校は2年生の時に

修学旅行に行くことになっていた。


修学旅行は広島へ行った。




その夜に宿泊施設の近くの海岸で

先生たちが打ち上げ花火をして

生徒たちに見せてくれることになっていた。



私は集合時間より20分も早く海岸へ向かった。



海岸にはMさんが先にいて一人で座っていた。


まだ時間が早かったので、私とMさんの二人きりだった。


Mさんに近づいていくと地面に何か文字が書いてある。


私は、

「何て書いてあるの?」

と、ききながら近づいていったのだが

Mさんは何も言わず、その文字をかき消してしまった。


何か怒ってるのかな?と思ったが、

Mさんが、

「ねえ、その時計見せて?」

と頼んできたので

私は腕から時計を外してMさんにわたした。


Mさんは時計を熱心に裏返したり、

正面にしたりして、ながめていた。


やがて、他の生徒たちが集まってきた。

Mさんは時計を返してくれた。



その夜の花火はとても、きれいだった。

私はMさんに話しかけたが、

花火の音がうるさくて、きこえていなかっただろう。





高校3年生になるとMさんとはクラスが別々になった。



そのころは、男子の友達T君と一緒に自転車で帰るのが日課だった。

T君のクラスに行くと、Mさんのクラスの前を通る。


Mさんとは、話すこともなかったが

私はよく廊下からMさんを見ていた。


クラスが違うだけで、こんなにも遠く感じるものなのか。





そして、そのまま高校を卒業してしまったのだった。





その後、私は

大学1年生の時、統合失調症を発症してしまうのだ。




夏休みが終わったあたりから、頭がぼーっとして

脳みそに膜がはったかのように感じて、眠れなくなった。


大学の授業も休みがちになってしまった。



そして、ある日、突然、発狂してしまったのだ。





夜中にさまよい、明け方に下宿にもどると

大事にしていた本を燃やしてしまい、

大学の定期テストも、ほっぽりだしてそのまま電車に乗った。




そこから、記憶がとぎれとぎれになり、実家にたどり着くと、

両親は私が、おかしいのを感じたのだろう。

父は会社に明日休むと電話をかけていた。



私は暗くなっているなか、家を飛び出し、また

夜中、街をさまよっていた。



コンビニエンスストアで叫び声をあげ、

店員に注意されていたところを警察に保護された。




父が警察署まで迎えに来て、家まで車で帰った。



次の日、近所のトヨタ記念病院の心療内科で、

診察を受けたようなのだが、まるでおぼえていない。


そのまま、猿投の仁大病院という精神科の専門の病院へ

連れていかれた。


そこで、院長の診察を受け、ただちに入院が決まったようなのだ。

私はその時の記憶が全くなく、

入院の書類に署名もできない状態だったため

恐らくは、強制入院だったのではないかと思う。




そして保護観察室という、個室に入るのだが

そこは6畳ほどの広さに布団が敷いてあり

便器が備え付けてあるという、まるきり

牢屋のようなところだった。



観察室内には本や筆記用具なども

許可がなくては持ち込めず、

看護師が外から鍵をかけて、

扉の開け閉めを行う。




私は薬を飲むのを拒否したが無理やり飲まされた。


初めのうちは薬の副作用で気持ち悪くなったりした。




気が狂うというのは、どんな状態か

みなさんは興味があるだろう。



その時、本人は、興奮状態にあって

正しい判断が出来ないのだ。




何故だかはわからないが、

無茶苦茶なことが当たり前のように思えて、

奇妙な振る舞いをするのが正しいような気がするのだ。



統合失調症になると

脳内のドーパミンという情報伝達物質が

過剰に反応し、幻覚や、妄想を引き起こす。


聞こえるはずのない言葉が聞こえてきたり、

あり得ないことを信じてしまったりする。





薬は、ドーパミンの伝達を阻害することによって

症状を抑えるため、薬が効きすぎると

本来の正しい情報伝達も少なくなってしまう。



それに加えて、病気により脳にダメージが加わるらしく、

眠気や記憶の障害、脳を使うあらゆる能力の低下などが起きてくるのだ。




この病気になると、あまりにも多くのものを失ってしまう。


多くの人が社会に適応できなくなり、何年も無駄にしてしまう。





その後、なんとか病院を退院した後も、

統合失調症の消耗期の陰性症状に悩まされることになった。



無気力になり疲労感が強く、すぐ疲れてしまう。

睡眠時間も長くなり、引きこもりのようになった。




病気になってから、もう10年近くも経っていた。



消耗期から、徐々に回復期に移り、

ディケアセンターに通いながら、アルバイト程度なら

できるようになっていった。



そのころは、ガソリンスタンドでアルバイトをしていた。

アルバイトで得た収入で、中古の軽自動車を買ったりもした。


やっと、少しは、まともな日常が訪れたと思って、

自分に自信を取り戻しつつあったころ。





そのころ、ファイナルファンタジーXIというオンラインゲームの

サービスが開始された。


私はゲームを買いそびれて、サービス開始から一カ月ほど

遅れてゲームをはじめた。



ファイナルファンタジーXIには プレイオンラインチャットという

無料で提供されていたサービスがあった。



チャットというのはいまでいうLINEみたいに文字で会話する

ものだが、LINEとは違い、まさに本当の会話と同じく

リアルタイムでその場で行うものだ。




私はプレイオンラインチャットで”五㊨衛門”と名乗り、

いろいろな人たちと会話していた。



そのなかに komati という女の子がいた。


komati というのは小野小町からとったんだと彼女は言っていた。



komati と具体的にどういう会話をしたのかは

そのころ、アルバイトも忙しかったため、よくおぼえていない。



ただ、毎日会話していくうちに、だんだんと仲良くなっていった。




その日、komati の様子がなんとなくおかしかった。


komati は自分の彼氏がバイク事故で亡くなったと私に告げた。


何度も、私も死にたい。という komati に対して

私も何度も、死ぬな、死ぬな、と文字を打ち込んだのをおぼえている。


生きていれば、きっといいことがある。

それは今ではないけど、そのうち、きっといいことがある。

だから、死ぬな!生きろ!



それは、自分のことでもあった。



それからしばらく komati は、眠れないの。と言っていた。

精神科の看護師から3日以上眠れない時は

睡眠薬を飲んででも眠らなきゃダメだと言われたことを思い出した。



komati に睡眠薬の使い方を教えた。

私も主治医に、眠れない時は飲むようにと睡眠薬を

処方されていた。その知識が役に立った。





やがて、少しずつ、komati は元気を取り戻したようだった。







ある時、komati と私とミサキという女の子が一緒になった。

3人は私が”五右衛門風呂”と名付けたチャットルームの常連だった。


そのため3人は、とても仲が良く、

お互いの顔写真を交換しようじゃないか。ということになった。


私は写メをとり二人に送った。

二人からも写メが送られてきた。



ミサキは少女で可愛かった。

komati は大人の女性で美しかった。彼女は女子大生くらいに見えた。



写メは見たらすぐ削除するという約束だったので

私はすぐにそれを削除した。



だから私は気づかなかった。

ある重大なことに。






だが、komati は気づいたのだろう。



それからしばらくの後、

komati は私のことが好きだ。と告白した。




この時、私は気づいていなかったのだが、

実は komati はMさんだったのだ。




私はそんな komati に対して、大塚愛が好きだ。

と言ってしまった。



そんなバカな私に対して、 komati は

その後も普通に接してくれていた。







そして
9月13日が来た。

その日は私の誕生日だった。

komati はその日、チャットルーム”五右衛門風呂”に来て

誕生日おめでとう。と言ってくれた。

ロウソクの火を消して。という彼女に

私は、顔文字でロウソクの火を吹き消す様子を表した。


komati は誕生日プレゼントだと言って音声ファイルを送ってきた。

私はそれを聴こうとしたが、パソコンの設定が悪かったのか

とうとう音声は聴き取れなかった。



その後、どういう会話をしたかは忘れてしまった。






komati や他のプレイオンラインの仲間たちとの楽しい日々は続いた。

そこでは病気のことを考えなくて済んだ。







そしてその日、突然、 komati は歌手でデビューすることが決まったと言った。

歌手としての名前を考えてくれないか。と



私は少し驚いたが、しばらく考えてから



”YUI”と名付けた。

ゆきひろ いしかわ の頭をとって ”ゆい”

ファンのみんなと絆を結ぶという意味も込めた。

そしてビッグな歌手になれるように、全部大文字で

”YUI”にした。






そして、YUIは私の期待通り、大物歌手になったのである。






YUI の曲を聴いた私は、歌詞の内容から

YUIがMさんではないかと思いはじめる。

私とMさんとの思い出が

歌詞になっているように思えてならないのだ。






それに YUI の顔がMさんとそっくりなのだ。


この話をすると、ある女性は YUI くらいの美人なら

どこにでもいるよ。と言う。









YUI はMさんで、私の小学生の時の幼馴染なのである。

そして彼女は一週間で転校してしまい、

その後、高校の同級生として再会し

そしてまた別々の道を行き、

私は統合失調症という不治の病にかかり

回復の兆しをみせた時に

プレイオンラインチャットというネット上で

再び再会し、お互いの顔も名前も知らないまま

交流を深め、ついには彼女から告白され、

そして”YUI”という名前は私がつけたものなのだ。




私の話を聞いたものは、それはお前の妄想だろう、と言う。


あなたも、やはり、これが私の妄想だと思うだろうか。







だが、私のなかでの YUI との思い出は現実のものである。

と信じている。


だから、その証をここに記したいと思った。






YUI はとても美人だったが、ごく普通のひとだった。

私は、たしかにその手にふれた。



これが私の妄想でないことを願っている。

そして、できれば、この思い出が

恐ろしい病によって消えないで欲しいのだ。



The Truth Of Lunatic LoVe 「真・竹取恋愛物語自叙伝」

よしよし、いまから



ボクのホンネのところを語ろうか。




君には、とても信じられない話だろうが

決して、ウソ、いつわりはないと誓おう。




かなり、くそ長い話になるから覚悟しておけよ。









「真・竹取恋愛物語自叙伝」      
”The Truth Of Lunatic LoVe”
                       
                                                                                                  作:いしかわ ゆきひろ
           




幼稚園のお泊り会。



おねしょの心配があったボクは

みんなが寝てから、トイレに行った。


実を言うとボクは小学校6年生まで

オネショをしていたのだ。


大きいほうは、大人になってからも

もらしたことがある。





ふと、窓の外を見ると

月が出ている。



満月だな。と思った。

幼稚園児のボクは、それ以上の感想は特になかった。






竹取の翁が見つけた光る竹。



そのなかから出てきたかぐや姫。




かぐや姫は、みるみる成長し、



美しい娘に成人した。





かぐや姫は、あまりの美しさに求婚してくる男性が殺到した。



なかでも熱心な5人の求婚者がいた。




かぐや姫は彼らに、それぞれ、



仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の裘、龍の首の珠、



燕の産んだ子安貝を持ってくるように言った。





5人の若者はみな失敗した。





かぐや姫の評判は、帝のもとにまでおよび、



帝がお忍びで、かぐや姫を訪ねた。





帝は、かぐや姫を美しく思い、連れていこうとしたが



かぐや姫は、光になり、連れていくことができない。




帝は、あきらめて京へもどった。




そのうち、かぐや姫は、月を見て泣くようになり、



翁がわけを訊くと、



自分は月の都の人であり、八月の十五夜に



月へ帰らねばならない。と言う。





帝は軍勢を引き連れて、月の民を追い返そうとしたが



まるで力がはいらず、矢も全て外れた。





かぐや姫は、帝に思いを残しつつも月へ帰っていった。






満月が見下ろす明りの下。




トイレで用をたしていたボクの、おしっこは

少し便器からはみ出してしまった。


大人でも急いでいると、はみ出す人が

いるくらいだから、幼稚園児のボクが

はみ出すのは普通のことだった。



幼稚園の先生は掃除がたいへんだ。



ボクは、トイレからもどると、

布団にもぐりこんだ。





次の日の朝。



オネショは大丈夫だった。


少し、ほっとした。


みんなで食べる、朝ご飯は

豆ご飯と味噌汁に納豆、玉子焼き。



隣の女の子が、玉子焼きを一切れくれた。


ボクはそのコの名前も

”ありがとう”という言葉も、そして恋も愛も

まだ、知らなかった。



幼稚園のころ、ボクはまだ、何も知らなかった。


でも、まわりはみんな、やさしかった。





満月はボクを見守ってくれてたのだろう。



やさしさと満月は、なんだか重なる。



そんな気がしていた、子供のころのボク。





大人になったボクに

いつか帰る場所があるなら、

それは月ではなくて………、どこなのだろう?




答えがみつかるのは、まだまだ先だ。






ある日。


小さな女の子と、その父親が訪ねてきた。



どこから来たのか、どういう知り合いなのか、

子供のボクには、わからなかった。



ボクのお父さんが言うには、”いいなづけ”なんだそうだ。

幼稚園児のボクには、いいなづけの意味がわからない。


ボクのお父さんは真面目な顔で冗談を言うから

それがホントかウソかわからなかった。



「仲良くせなアカンでぇ。」と関西訛りで言う。


お父さんは京都の出身だった。


このころはトヨタ自動車に勤めていたが、

昔は老舗の呉服店で働いていたそうだ。

そこは見切りをつけて正解だった。

そうじゃなきゃ、今のボクはいない。




その女の子と、女の子のお父さんとボクで

近所を散歩して歩いた。


すると、ある家のポストに花束が挿してあった。


母の日のカーネーションだった。


ボクはそこから一本、拝借して女の子にわたした。


拝借と言葉をにごしているが、それは窃盗とも言う。




女の子は反対側の家の岩垣を指差した。


そこに、小さなアマガエルがすわっていた。


ボクはアマガエルをつかまえて、

女の子の手のひらにのせてあげた。


女の子の手のひらからカエルはぴょんぴょんと

跳ねて、地面へ逃げる。



ボクはそれをつかまえて、もう一度、彼女の

手のひらにのせる。


また、カエルは手のひらから逃げていく。



三度目で気づいた。


「カエルいらないの?」




女の子は小さくうなずいた。




女の子のお父さんは、

「写真撮るから並びぃ。」

と、カメラを構えた。



二人で並んで写真を撮った。



昼間の白い上弦の月がボク達を見下ろしていた。




その女の子と、そのコの父親はそれきりで、

もう二度とウチへ訪ねては来なかった。




母に訊いても、知らないというばかりで


父が他界した今となっては、

本当に、いいなづけだったのかどうか、わからない。






小学校に入るとボクは背の順で、いつも前の方に並ばされた。


ようするに、小さかったのだ。



学校での一番の楽しみは、給食だった。


牛乳は嫌いだったが、給食は残さなかった。

小学校の6年間で一回だけ、唯一残したのが

伝説の、くそまずメニュー”枝豆クレープ”だった。

今、小学校の友達にきいても、

あれはマズかった。と口をそろえて皆が言う。




ある日の図画工作の授業で、を描くように、

という課題があった。


校庭に出て、サクラの樹もの中におさめた。


ボクの生涯のなかでも1,2をあらそう傑作ができた。

そのは、先生に提出したきり返ってこない。


実は、その年の最後に先生が、

「提出したを返してほしい人は申し出てください。

返してあげます。」

と、言っていたのを今、思い出したが、

当時のボクは先生の話を良くきいてなかったので

申し出なかった。

よくきいてなかったのに、なぜ、今、先生の言葉を

思い出したかは謎だが、

歳をとるとそういうことはまあまあ、ある。



もう一度、あのが見たい。と、今でも思う。



ボクが6年生になった時、

それまではみんな、バラバラに帰っていたのだが、

安全のためということで、近所に住んでいる子ども同士は

一緒に帰るということになった。


そこで一緒に帰るグループの中にいたのがMさんだった。



ボクとMさんはグループの中で最後尾を歩いていて、

自然と話をするようになった。

Mさんは近所に住んでいるみたいだったけど、

ボクは、その時、はじめてMさんを知った。



Mさんは背が小さくて、よくしゃべるコだった。


「ねね。アタシ大きくなったら手になるの。

「へー。じゃあ、ギターかピアノが弾けるといいね。」

「うん。それで、その後、女優もやってね。

そんで宇宙飛行士にもなって宇宙へ行くんだ。

あなたの夢はなに?」

「ボクの夢?うーん。

きれいな、お嫁さんをもらうことかな。」


かたむきかけた西日が少年と少女を照らしていた。




それから1週間ほどすぎたある日。



ボクはいつものように、Mさんとおしゃべりをしようと

帰り道の途中にとおった公園の中を歩きながら話しかけた


「あのね、悲しみはいつだって

愛情の近くに、ひそんでいじわるするよ。」

それは昨日、見たドラマのなかのセリフだった。



「……………………。」

いつもは饒舌なMさんが今日はなぜか黙っていた。


ボクは、なにかイヤなことでもあったんだと思い、

それ以上はあまり話しかけなかった。



Mさんの家の近くまで来た時、

Mさんが突然、走り出したので、ぼくは思わず

は見せないで!」

と叫んでしまった。


Mさんはをぬぐいながら手を振った。

ボクも手を振っていた。




Mさんは、何も言わなかったが、実は、

Mさんはその日を最後に、転校してしまったのだった。



Mさんといっしょにいた期間は1週間もなかった。

だから、ボクはMさんの

下の名前すらも知らなかった。




思えば、それがボクの

初恋のようなものだったのかもしれない。






やがて、サクラの季節を迎え、

ボクは中学生になった。



中学生になってからも、ボクは背の順では、

前から3番目以内に入っていた。



中学生になって、女の子を異性として意識するようになり、

えっちなマンガや雑誌に興味がわいた。


当時、週刊ヤングサンデーで連載されていた、

遊人のえっちな漫画「ANGEL」が好きで持っていた。

他にもえっちな雑誌を拾って来て見ていたりもした。


そういう雑誌を熟読していたので、

えっちなことに、やけに詳しかった。




その一方で、普段はクラスの女の子と普通に話したりしていた。

気になる女の子も何人かいた。


Mさんとは席がとなりどうしだった。

ここでのMさんは、小学生の時のMさんとは別人である。

たまたま、二人ともイニシャルがMだっただけである。


そのコとはよく、おしゃべりをした。


「石川君の好きな果物って何?」


「うーん。桃か、さくらんぼかな。」


「さくらんぼ?さくらんぼってどんなの?」


「知らないの?小さくて赤い実だよ。

よく、プリンとかパフェなんかの上にのっかってる

ふたつくっついてるやつ。」


「ふーん。ねえねえ。

石川君は大きくなったら何になるの?」

「うーん。わかんない。まだ決めてないよ。

Mさんは、何になるの?」

「わたし!? 私、バカだから

何もなれないよ。」

確かにMさんは成績があまり良くなかった。

「何か得意なこととか、好きなことないの?」

「音楽は好きだけど………。」

「じゃあさ、手になればいいじゃん!

みんなの前でって。」


「私のお母さんが手だよ。」


「え?何ていう手?」


「松任谷由実っていうんだけど、知ってる?」



「えええ。すごい有名な歌手じゃん。

 その人のラジオ、いつも聴いてるよ。」




そこで授業終了のチャイムが鳴った。



温厚な人のいい先生が珍しく怒った。


「石川とMは先生の話を全然きいていなかったので

罰ゲームじゃないけど、今日の授業後、残って、

後ろの掲示物の張替えをしてもらいます。」



ボクとMさんは、その日、居残って

みんなの習字作品を

教室の後ろに張り出す作業をした。







そんなある日、となりの席のMさんが、


「アタシ、あんたのこと好きなんだけど、あんたはどう?」

と言ってきた。


その時は、わからなかったが、ものすごく勇気のいる発言だ。


その時のボクは素直に、

「うーん。ボクも好きだと思うよ。」

と返事をした。


今、思えば、その時からボクたちは両思いが確定したのだった。


でも、恋愛のことなど、なにもわからなかったボクは、

そのコとも、まだ、友達気分のままだった。


そのコのことは本当に好きだったのだが

なぜか、えっちの対象としては考えられなかった。






ある日、彼女はボクと手をつなぎたいと言った。


ボクは恥ずかしくて、拒否した。


彼女はボクの手を無理矢理握って、離そうとしなかった。


すると、ボクの股間が熱くなってきてしまった。


そこでボクは、思わず、やめろ!と叫んでしまった。



その時、手を離した彼女の気持ちが、今ならわかる。

でも、当時のボクには、わからなかった。



そのことがあってから、2,3日して

彼女は、めげずに、もう一度、手をつなぎたいと言ってきた。



今度は、手をつないでボクのポケットに手をいれたいと言った。

ボクは、しぶしぶOKした。

ボクのポケットのなかで二人は手をつないでいた。

なんだか、やさしい気持ちがした。



彼女は、今度は私のポケットに手を入れて、と言ってきた。

女の子のスカートのポケットに手を入れるなんてことは、

恥ずかしくてできなかった。


それこそ、また股間がヒートしてしまう。


それでも、彼女はボクの手をとって、ポケットにもっていった。


ボクはまた拒否した。


彼女の望みは叶わなかった。


恋におくびょうなボクは、彼女を傷つけてしまうばかりだった。




そんなこともあり、彼女が落ち込んでいたある日のこと

ボクは彼女を喜ばせようと、こんなことを言った。



「昨日の晩、未来のボクと話をしたんだけど

未来では君は、”大塚愛”という名前で

とても有名な歌手になって活躍してるみたいだよ。」

彼女は、その時、喜んでくれた。と思う。



そしてのちに彼女は、ボクの言ったことを

本当に叶えてしまったのだ。




そう。今まで秘密にしていたが実は彼女は、

今は、大塚愛という名前で歌手をしている。




ただ、この時、ボクの思いついた名前がよくなかった。

”大塚愛”というのは当時、活躍していた

AV女優の名前だったのだ。


いい名前だと思って使ったのだが、

やっぱり、マズかったな。




そんな彼女とは、進学先が異なったので、全く

会わなくなってしまった。






高校生のボクは部活に打ち込んだ。

高校では柔道部で体を鍛えていた。

勉強はできなかったが、

部活動はとても充実していた。



だが、たまに部活をサボって、

クラスの仲間とトランプで遊んだりした。



トランプの大富豪というゲームを友達と一緒に

考え出して、夢中になって遊んでいたのだ。


ここで、え!?あの大富豪を考えた人が

いしかわ ゆきひろ なの!?と驚く人もいるだろう。

実際は、私と池本君という友人と二人で考えた。

池本君とは名簿の番号がとなりどうしで

席がすぐ近くだったため仲がよかった。



当時は、大富豪が、まさかこれほどまで

メジャーなゲームになるとは思わなかった。



考案当初は、現在よりも

シンプルなルールで遊んでいた。

今ある変則ルールのほとんどは

全然、知らない人が知らないうちに

勝手に加えていって、それが広まっていったものである。




しかし、部活をさぼって大富豪をしていたので

バチがあたったのか、練習中に腰を傷めてしまい、

柔道ができなくなってしまったのであった。




高校に入ってからは、女の子を意識しすぎて

気になるコがいても、

まともに話す事もできなくなっていた。


勉強ができなくなって成績が落ち込んだ。


家に帰ると、スーファミの

ドラゴンクエストV を夢中で遊んだ。

ドラゴンクエストV では、主人公が結婚するイベントがある。


高校生のボクに結婚の意味などわからなかった。

ただ、なんとなく、好きな人とは、結婚するもんだ。

と、思っていた。




そして、高校2年のある日。



授業が終わり、帰りの学級会が終わって、

クラスのみんなは、帰って行く。



その日は何となく、家に帰りたくなかったボクは、

教室に残っていた。



すると、教室にはボクとMさんだけが残った。

ここでのMさんは大塚愛さんではない。

Mさんとは高校2年生ではじめて一緒のクラスになった。

とボクは思っていたのだが……。


ボクはクラスの中でもMさんが1番かわいいと

ひそかに思っていて、気になっていた人だった。


なんとなく声をかけてみた。


何を話したのかは、あまり憶えていないが


進路のことや、テストのことなんかを話したと思う。


ふと、会話が途切れて、ボクは話題を変えた。


「Mさんって好きな歌とか何かある?」

「別にないなぁ、石川君は?何か好きな歌ある?」


「愛は勝つかなぁ、今、流行ってるじゃん」

「知らない、どんな歌?」


「かーなーらーずぅ、最後に愛は勝つぅー♪

って知らない?」

「知らない。」


そういってMさんは笑った。



教室に西日が差してボクたちはオレンジにつつまれていた。



ボクたちの高校では、3年生は受験があるので

修学旅行は2年生で行くことになっていた。


修学旅行は広島へ行った。




その夜に宿泊施設の近くの海岸で

先生たちが打ち上げ花火をして

生徒たちに見せてくれることになっていた。



ボクは集合時間より20分も早く海岸へ向かった。



海岸にはMさんが先にいて一人で座っていた。


まだ時間が早かったので、ボクとMさんの二人きりだった。


Mさんに近づいていくと地面に何か文字が書いてある。


ボクは、

「何て書いてあるの?」

と、ききながら近づいていったのだが

Mさんは何も言わず、その文字をかき消してしまった。


何か怒ってるのかな?と思ったが、

Mさんが、

「ねえ、その時計見せて?」

と頼んできたので

ボクは腕から時計を外してMさんにわたした。


Mさんは時計を熱心に裏返したり、

正面にしたりして、ながめていた。


やがて、他の生徒たちが集まってきた。

Mさんは時計を返してくれた。



その夜の花火はとても、きれいだった。

ボクはMさんに話しかけたが、

花火の音がうるさくて、きこえていなかっただろう。




学年が3年生に上がると、Mさんとは

クラスが別々になり、全く話さなくなった。


ボクは男子しかいないクラスになり、

浮いた話も全くなかった。




そのまま高校を卒業してしまうのだが、

Mさんとは、これで終わりではなかった。

その話はかなり後のほうになる。




大学受験、三重大学の生物資源学部を受験した。

試験の日、雪がちらつく寒さで風が強かった。

三重大学はキャンパスのすぐ近くに海があった。


4月から住む下宿を訪ねた。


親切でやさしかった、

下宿先の大家さんのおばあさんの前で、母はした。


子供の頃から、そんな母が心の重荷だった。


大学がはじまり、新しい友達も増えた。


人形劇のサークルに入った。


そのなかで好きなコもできた。


毎日が充実していた。



しかし、その頃から、突然なんだか、頭が、ぼーっとしてきた。


一日中、頭の脳みそに膜が張っているような感じがして

気持ち悪い感覚が続くようになった。


あまり眠れなくなり、大学の授業も休みがちになった。



大学の定期試験がはじまった日に、

なんと突然、発狂し、大事にしていた本を燃やし、

なにもかも放り出して、下宿を飛び出し、

気づいたら、電車に乗っていた。


記憶がとぎれとぎれになり、なんとか実家にたどりついた。


両親は、ボクを見て、おかしいと感じたのだろう。




次の日、近くの総合病院の心療内科へ、ボクを連れて行った。


するとすぐに、市内の精神科のある専門の病院を紹介された。


専門医である院長の診察を受けて、すぐに入院が決まった。




19歳で発病が確定した。


病名は、これからの入院生活で医師が様子をみて決める。


その時のボクは、まともに話す事もできなくなっていた。



入院してすぐに、腰のベルトを取り上げられた。

自殺防止と、凶器になるからだ。





入院して最初に入った病室は

隔離病棟の個室だった。


個室といっても、金持ちが入るような病室じゃない。


そこは、患者たちの間では”独房””と呼ばれていた。



六畳ほどの広さに、布団だけが敷いてあり

隅っこに便器がついている、

まるで檻のような部屋だ。

檻と同じで外側からしか開け閉めができず

必ず鍵が必要である。


自殺や他人を傷つける恐れのある患者などが

主に入れられることになっている。


食事も檻のように小さな窓から差し入れる

ようになっていたが、

それでは、まるで囚人のようだというので

途中から、看護師がわざわざ扉をあけて

運んでくれるようになった。



独房では、食事にハシは使えない。


患者にハシを渡すと武器にもなるし

自殺する道具にもなるからだ。

ようするにベルトと同じで禁止だ。


だから、食事は、壊れやすい、

プラスチックのスプーンでしか、食べられなかった。


給食でプリンやアイスクリームを食べるときに

使うようなやつだと思ってくれればいい。

あれを、もう少し大きくしたような感じだ。




病院の食事は、くそまずかった。




その当時のボクは、

本当に気がふれていたので

独房の中でした自分のくそを

口に入れてしまったことがあった。


味は、食った人ならわかるが、くそ苦かった。




食後の薬は拒否しても、無理矢理、飲まされた。


最初のうちは、薬がボクにあわず、気分が悪くなったりした。



自殺や、他人を傷つける恐れがなくなったと

医師が判断したのだろう、

ボクは、しばらくして一般病棟に移された。


一般病棟では、食事にハシが使えた。



しかし一般病棟といっても隔離には、違いはなく

そのフロアからは一歩も出られないようになっていた。


外への出入り口は常に鍵がかかっている。


看護師などのスタッフは、全員がカギを持っていて

いちいち開け閉めして、出入りする。


看護師は、カギの開け閉めが、異常に速かった。


カギを操作しているときは、

患者に背を向けることになり、

患者に襲われたら危険だからだ。


だから、危険そうな患者が近くにいる時は

カギの開け閉めは、絶対しなかった。




周りの入院患者は、暴れたりする人や

異常に元気な人以外は、

どの人も生気がなく、精神を病んでいた。

全く、笑わない人もけっこう多かった。



精神病院なのだから、それが当たり前だ。




ボクはココロを閉ざした。



薬のせいか、病気のせいか、気分が停滞した。



女性患者のなかには、きれいなコもいたが、


やはり、心が病んでいた。


病院内でつきあってる男女もいたが、

ボクは入院中の女のコは、

なかなか好きになれなかった。




脱走と転落防止のため、

5㎝くらいしか開かない窓から、

外をのぞくと、満月が出ていた。


許可が下りなければ病院の外へは出られない。



ボクはここで2年を過ごした。



若さのせいか、薬の調整がうまくいったのか、

じょじょに気分が上向いてきた。



食欲が出てきて、病院食も残さず食べた。


そのころには患者たちの

飯がまずい、どうにかしろという要求に

答えてくれたのだろう。

病院食の味もかなり改善されて美味しくなっていた。



やがて主治医の女医は、退院をすすめてきたが、

休学中の大学を、自主退学するのが退院の条件だった。


はっきりとは言わないが、一人暮らしで大学へ通うなんて

今のボクには、無理だということだったのだ。




病気のせいでボクの人生は一転した。



もう、まともな人生は歩めないと、うすうす感じた。




退院後も病院の施設の

ディケアセンターというところに通うことになった。



精神病患者の社会復帰を目指す施設ということだった。



退院後も、週1回の診察があり、薬は飲み続ける。

というのが、先生との約束というか決まりごとだった。




この頃のボクは、健常者が、とてもうらやましかった。



精神病歴のあるボクは、

バイトの面接に行っても、まともに取り合ってもらえない。



「そういった病気があるなら、就職は難しいと思います。」


と、面接中に言われたこともあった。



どうして、このボクが。と何回も思った。




バイトですら、なかなか決まらないボクは、

もう、まともに恋愛なんて、できないだろうと思った。

だが、それは間違いだったと後に気づく。



ディケアセンターの職員には、

精神保健福祉士や看護師、作業療法士、精神科医などがいた。




若い女性の職員もいた。


何年も通ううちに、

ある女性職員の人を好きになった。



どう考えても、無理なことだとわかっていた。


彼女にとっては、ボクの好意なんて迷惑なだけだ。


でも我慢できなくて、好きだと言ってしまった。



もちろん、職員と患者だからということで

ボクの気持ちは受け入れられなかった。



ただ、好きだと言えたことで、後悔はしないですんだ。




そして時が過ぎ、やがて

新人の女性が職員として入ってきた。



その人に特別な感情は、わかなかったが

どちらかというと、好きだった。


関西出身の人で、少しおちゃらけていて

話していて、とても楽しい人だった。




ある日、作業室で、偶然なのか、

その人と、二人っきりになった。



作業が終わってボクがイスに座って

一息ついていると、

突然、後ろから抱きつかれた。


「な、なに?!」


「愛してるって言って。じゃないと放さない。」


「あ、愛してるっ」


「そんなんじゃだめ、心をこめて」



ボクは後ろにいる彼女の顔を思い浮かべながら言った。


「愛してる」


すると彼女は、ボクを解放した。



「な、なんだよ。突然。」

ボクは動揺して作業室を出て行った。


彼女は、その後、何もなかったかのようにしていた。



ボクは悪い気はしなかったが、

職員と患者の関係があるので、

ボクからは何もしなかった。


その人とは、友達のような感じで接していた。



ある日、その女性職員が、

いつものように冗談を言ってきた。



「ねえ、もし私が歌手になるとしたら

どんな名前がいいか考えてみて。」


ボクは、ふざけて

「あやかが、いいんじゃない。」

と言った。

あやかというのは、彼女と一緒に働いていた

もうひとりの女性職員の名前だった。



「あやか、おもしろいね。漢字は……。」

「漢字は、別の字をあてて。」

「そっか、ありがとう。」



そう。信じてもらえないかもしれないが、

彼女はその漢字に”絢香”という字をあてたのだ。



そして、彼女は本当に歌手になると宣言して、

ディケアセンターを去っていったのだった。




いろいろあったが、

ディケアセンターに通う月日が過ぎ、

病状が安定し、ボクはアルバイトを探していた。



ディケアセンターの人たちとのふれあいのなかで、

たとえ健常者でも、人生のなかには、なにがしかの壁の

ようなものがあって、みんな、必死にもがいているんだ。

ということに気づいた。



バイトの面接では、病気のことは、なるべくばれないようにした。


すると、間もなく面接に受かった。


ただのバイトでも社会へ出て行くのが怖かった。


ボクは薬を飲まなければ、まともに話す事もできない。


逆に、薬さえ飲んでいれば、健常者と、あまりかわらない。とも言える。



釣具店で1年程、勤めた。


バイト2件目のスーパーマーケットでは、病気のことを訊かれたが、

計算問題のようなものをやらされて、合格した。


店長と、副店長だけがボクの病気のことを知っていた。



毎日、野菜を袋に詰め込んだ。


精肉機を分解して洗った。


魚のアラや骨、頭や尻尾の部分をゴミ袋に詰め込んだ。


スーパーの裏方は半年くらい続いた。



そこを辞めると、今度は

ディケアセンターの職員のすすめもあり、

ガソリンスタンドの面接を受けてみた。




ガソリンスタンドの仕事はきつかった。


30そこそこのボクは給油に接客、窓拭きに洗車、灯油販売など

次々に仕事をおぼえていった。



自動車のエンジンルームやワイパー、テールランプなど

の仕組みも勉強した。



店長にいわれて、ガソリンや灯油を扱うのに必要な

乙種第4類危険物免許の取得を目指して勉強した。




しかし、1件目のガソリンスタンドは、

半年ほどでつぶれてしまった。



それでも、乙4免許を取得したボクは、

すぐ次のスタンドにバイトで雇ってもらえたのだった。



そのころ、ディケアセンターで知り合った女の子と

ドライブしたりもした。



バイトで貯めた金で中古の軽自動車を買ったのだ。


そのころから、人生が上向いてきたような気がしていた。



ガソリンスタンドの仕事仲間は、良い人たちだった。


みんなで遊園地に遊びに行ったり、夏は海にも行った。



食後の薬は、みんなから隠れて飲んでいた。



そんなある日、仕事仲間から合コンに誘われた。


酒は飲んではいけないと、医者から言われていた。



だが、断りきれずに合コンへ行った。



居酒屋で3時間くらい食事と酒を楽しんだ。



ボクは何歳くらいに見える?という質問に

女のコは15~35の間、と答えた。


15歳の中学生にも見えるし、

35歳のおっさんにも見えるということだった。




その後、みんなで花火をした。



夏の通り雨が、ボク達の頭や頬、体を軽く濡らした。




そのまま、鞍ヶ池公園の展望台から朝日を見よう。

ということになった。



展望台の暗闇で、女のコの一人がボクに手を差し出した。



ボクは、中学時代の、あのことを思い出し、

何故だか怖くなって、その手を握れなかった。



また、女のコを悲しませてしまった。



朝日が昇ると、女のコの顔は

なにごともなかったかのようにみえた。

が、やはり落ち込んでいたようだった。


結局、そのコとは何もなかった。





ボクは仕事に打ち込んだ。




ある日、東京で就職していた妹が

結婚したいと両親に電話してきた。



家族と、妹の彼氏との食事会を開いた。



妹の彼氏は実直な人だと感じた。



彼は、ボクの病気のことを知っていた。


ボクが妹の重荷になっていると気づいた。





結婚式は無事に終わった。





その頃のボクはオンラインゲーム、

FAINAL FANTASY XI に夢中だった。



仕事から帰ったあとや、休みの日に、

オンラインの友達と冒険した。



そこでは、自分の病気のことをあまり考えなくてよかった。


赤魔道士のユッキーは、どんどん魔法を憶えた。



オンラインで知り合いが増えたが、

みんなハンドルネームで呼び合うので


本名や、顔も知らない、男か女かも、わからない仲間だった。


FINAL FANTASY XI を遊ぶ人のために

プレイオンラインチャット というものがあった。



ボクはそのチャットで

「五㊨衛門風呂」

というチャットルームをつくり、

いろいろな人たちとパソコンで会話していた。



ボクはそのチャットのプロフィールに

”毒入りチェリー”というアバター画面を選んでいた。




そのチャットルームの常連の一人に

komati というハンドルネームの女のコがいた。


ずいぶんと、かわいらしい発言をするので、

ボクはてっきり、中学生か高校生だと思っていた。




ある時、komati とボクと ミサキ という女のコの

3人がチャットルームで一緒になった。


その3人は、仲が良かったので、

お互いの顔写真を交換しようじゃないかということになった。


そこで見た ミサキ はまだ、少女だったが、かわいかった。


komati は大人の女性で、なかなかの美人だった。




写真の画像は、見たらすぐ削除するという約束だったので

ボクは1分ほどながめてからそれを削除した。



だから、ボクは、この時は気づかなかったんだ。

ある重大なことに。


ふと、窓の外をみると、夜に三日月が出ていた。






そんな、ある日だった。


komati に告白されたのは。


ただ、ボクは、顔を見たとはいえ、

小さな画像で1枚きりだったし、

チャットで仲がいいといっても、

声もきいたこともない女性に、恋愛感情はわかなかった。



だから、ボクの好きな人は、

”大塚愛”だと、komati に言ってしまったのだ。

それは本当のことだったから。



それでも、その後も、

komati はチャットルームに来てくれていた。



ある時、komati が突然、こんなことを言い出した。


「私、歌手としてデビューすることが決まったんだけど、

名前を考えてくれないかな?」

「え、そうなんだ。」



ボクは少し考えて、


「じゃあ、”YUI”なんてどうかな。

俺の本名の ゆきひろ いしかわ の 頭文字をとって ”ゆい"

あと、みんなと絆を 結ぶという意味と、

Bigな歌手になれるように、全部大文字で ”YUI" 」


「”YUI"だね。ありがとう。」



そう。なんとボクが名前をつけた歌姫は、

これで、3人目だ。

とてもじゃないけど、こんな話、信じてもらえないよな。




やがて、komati は歌手としての仕事がいそがしくなり

チャットルームにも、顔をほとんど見せなくなった。




ボクは、そのうち FINAL FANTASY XI をやめてしまい、

パソコンを替えたら、チャットにもいけなくなってしまった。





ボクが名前をつけたということもあり、

大塚愛、絢香、YUI の3人は、特に注目して

聴いているアーティストだった。



しかし、YUI の曲を聴いていると、不思議なことに気がついた。


YUI が、ボクと高校時代のMさんとの

思い出を曲の歌詞にしているのだ。



まさか、ただの偶然だろな、と思いながら

YUI の写真を見るとMさんの面影がある。



そこで YUI の写真の髪型を黒髪のボブにして

まゆ毛を少し、太くしてみたら、

それは、まさしく高校時代のMさんだった。



ボクは、今まで気づかなかった

自分のにぶさに愕然とした。



しかも、大塚愛が好きだ、

なんて言ってしまったことを

激しく後悔したのだが、もう遅かった。



そのことがあって、YUI は前にもまして

注目するアーティストになっていた。




ある時、YUI がテレビで歌っているときに、

彼女の少女時代の写真が、後ろに大きく

映し出されたことがあった。



それは、小学校時代に1週間で転校していったMさんだった。


今まで、完全に忘れていた思い出が

突然、頭の中に、よみがえった。



ボクとYUI とは幼なじみだったのだ。


わずか1週間ほどの間だったが

少年時代を一緒に過ごしていたのだ。





やがて、YUI は yui と名前を変え、

FLOWERFLOWER というバンド活動をはじめて

テレビには、ほとんど出演しなくなった。



そして、yui が結婚したということを最近知ったのだった。









以上が、ボクの体験した3人の歌姫たちとの

恋愛のようなものなのだが、

この話、果たして、どれだけの人が信じてくれるのだろうか。



今宵も月は、ボクの頭上を明るく照らしてくれるだろう。

西洋では月の光は、狂気を象徴するものだという。




ボクの頭が今も狂っているのでなければ、

この話は全部、本当の話である。








THE END



FAINAL FANTASY XI 外伝 「ルッピ・ジュッピの冒険」

オラの名はルッピ・ジュッピ。


サンドリア王国で生まれ育ったナイスなタルタルボーイだべ。



サンドリアはエルヴァーン達が興した王国だ。


ヴァナ・ディールで唯一、ナイトを輩出する優秀な武の国でもあるべ。




そんなサンドリアの海の玄関口の港にある冒険者達の溜まり場。


野兎の逆襲亭。



ホカッチャ豆とロンフォール兎の


新鮮な肉を煮込んで作った煮込み料理が名物だ。


 

いつも冒険者達が色々な噂話を酒のさかなにして集っていただ。



そこの調理場で働いている両親に育てられて


オラは何不自由なく暮らしていたんだ。



オラが16になったある日。


いつものようにオラは店で作る煮込み料理につかう兎を追いかけて、


森の奥深くまで来てしまっていただ。


ここら辺りは王国の人たちも滅多に足を踏み入れない場所だった。


王国の長い歴史の中でも屈指の武人、


龍王ランペールの墓があると噂される


森の奥深くに来ていただ。


「しまったなぁ。こんなトコロまで来て兎一匹しか獲れてねえぞ。


今夜の客は肉の取り合いになっちまうなぁ。」


実際、客の中には肉が少ないと、


いちゃもんをつけるやからまでいるからな。


 
などと考えていたその時、草むらがガサッと音をたてた。


オラはとっさに矢を放ったが手ごたえはなかった。



ΩXAγω!!


ヤブの中から獣のような恐ろしい声がして


突然、オラの目の前が真っ暗になった。


「うわっ。何も見えねえ。」


何か大きな生き物の気配が近づいてくる。


オラは逃げようとして、きびすを返した。


その瞬間、頭に何か硬いものがゴンッ!とぶつかって気が遠くなった。





野兎の逆襲亭の調理場では男と女、二人のタルタルが忙しく働いていた。


男のタルタルは包丁で何かの葉っぱのようなものを千切りにしていた。


女のタルタルは、かまどに載せてある大きな鍋の中の


グツグツ煮えているスープを必死にかきまわしている。


「ルッピのやつ、おせーだなぁ。」

  
「どこぞで道草でも食ってるんだべ。」


「ついでにハーブを採って来いとは言ったども、


 食えとは言ってねえべさ。」


「そろそろ、兎の肉ほうりこまねえと


 煮込み時間が足らなくなってまうべ。」


「しゃあねえ。今夜は豆だけで出すべな。」


「本当にルッピのアホたれぼうずが。」




そこへ、一人の若い男のエルヴァーンの給仕が入ってきた。



「おーい、料理長。仕込み終わったか?」


「いや、それが、ルッピのやつが


 兎を獲りに行ったまんま帰って来ねーだよ。」


「まさか、森の外れまで行っちゃいねーだろうな。


あの辺りはオークどもが旅人を狙って出没するって噂だぜ。」


「困っただなぁ。今から店が忙しくなるから

  
探しに行くわけにもいかねぇし。」

 
「今、店のほうに俺の知り合いの冒険者が来てるから


森へ探しに行ってもらおうか?」


「それなら、そうしてもらおうか。だども礼金て高いんだべな?」


「そうだなぁ、森へ探しに行ってもらうくらいなら前金で50ギル、


成功報酬100ギルってところじゃないかな。」


「あちゃー、ここ三日分の儲けがパァだな。


ルッピのアホたれめが。夕食抜きだかんな。」


料理長は包丁を振り回しつつそう言った。





野兎の逆襲亭の隅の席、


4人がけのテーブルに3人の男女が座っている。


一人は背が高く耳がとがっており、

軽装の革鎧に腰にショートソードを


帯びていた。おそらくエルヴァーンであろう。


もう一人はヒュームの男で、


こちらは鎖帷子に珍しい形の弓を背中に


くくりつけていた。矢筒に矢が大量に入っている。


腰には奇妙な形の短剣を二本挿している。


もう一人はヒュームの女性で


丈夫そうではあるが布の服を着ている。


だが、一見してわかるが明らかに戦闘用に造られた、


攻撃を受けても 刃の通りにくいつくりの法衣である。


腰には短めの杖のような棒切れを


挿していた。おそらく何かの魔力が込められているだろう。


二人は赤ワインと昨日の残り物の煮込み兎肉で

少し遅めの昼食をとっていた。


ヒュームの若者だけはビールと


バストアサーディンのバタームニエルを口に運んでいる。



エルヴァーンの剣士が口を開いた。


「なあ、シスター。俺は妙な噂を耳にしたんだ。きいてくれるかい?」


「どんな噂なの?マルレーン。」


ヒュームの女性はワインに少し口をつけた。


「何でもサンドリアを狙っている獣人オークどもの


前線基地であるゲルスバ砦に今度の新月の晩に


オークの王バゴデが部下を引き連れておみえになるんだとさ。」


「それはまた、物騒な話ね。」


ヒュームの女性はワインを飲みほすと、お替りを注文した。


「それと、もうひとつ。


俺達、エルヴァーンの中にも魔法の技を


身につけた連中が少なからずいるんだが、


そいつらのなかに失われていた古代の秘術を復活させた


者が現れたらしい。」


「失われた古代の秘術ですって?」


女性は興味を持ったようだ。


「おい、ちょっと」


黙って魚料理を口に運びながらきいていたヒュームの男が


口を挟んだ。


「どうした?」


いつの間にかテーブルそばに一人のエルヴァーンの給仕と


男女二人組のタルタルが来ていた。


「ちょっと頼みがあるんだよ。マルレーン。」


エルヴァーンの給仕が頭を下げた。


「頼みとは何だ?」


「オラ、ここの料理を任されているロッピ・ジュッピといいますだ。」


「アタシは妻のシャルルですだ。」


「オラ達の息子のルッピが


料理用の兎を獲りにロンフォールの森へ


 出かけたまんま戻らねぇんでさぁ。」


「もしかしたらオーク達に襲われでもしないかと心配なんです。


 だども、アタシ達は店があるだで探しに行かれねぇだ。」


「じゃあ、俺達がそのルッピというタルタルを連れて帰れば


 いいんだな?」


背中に弓を背負った短髪のヒュームが言葉をきった。


「ええ、お願いしたいんだども………。」


「前金で100ギル、成功報酬150ギルだな。」


と、エルヴァーンの剣士マルレーンは言った。


「えええ、そんなに高いんだかぁ。」


「ここの売り上げ一週間分だぁ。」



「近頃、どういうわけだかロンフォールの森に


 オークが大量に現れるようになってね。


 それくらいもらわなければ割が合わないよ。


 こっちも命がけなんでね。」


「息子の命には代えられねえ。お願いしますだ。」


 タルタルの夫婦はそろって頭を下げた。





ルッピ・ジュッピが目を覚ますと体を


グルグル巻きに縛られていた。


頭を殴られたのかズキンズキンする。


周りを見渡すとそこは小さなテントの中だった。


粗末なつくりの寝床のようなものや、家具なのか


ガラクタなのかよくわからない品々が置いてある。



ルッピ・ジュッピは気絶して床に座らされていたようだ。


背中は何かやわらかいものにもたれていた。


背中に当たっているものが何か気になったので、


必死にもがいて、なんとか座っている向きを変えた。


すると、そこにはもうひとりのタルタルの青年が、これまた


片目の上に殴られた痕を腫らして気絶していた。



 

オラはそいつを蹴って起こそうとした。


ちょっと小突いたくらいでは起きそうにない。


思いっきり蹴ったくった。


「うがっ!痛っってぇっ!」


「気が付いただか。」


「アレ?ここどこだ?


たしかオークの大群に追いかけられて目の前が


真っ暗になった後……。タコ殴りにされたんだった。」


「オラも目の前が真っ暗になった後、殴られただよ。」


「と、すると。ここはオークのねぐらか。


まさか、ダボイまで運ばれちまったんじゃねーだろうな……。」


「ダボイってなんだべ?」


「豚野郎どもの本拠地だよ。ダボイの奥には


オークの王様がいるって噂だぜ。」


「オラ達、食われちまうんだべか?」


「その前に脱出しようぜ。そらっ。」


そういって彼がアゴでさした先にはオークが武器として使う


大きなナタがテントの柱に突き刺さったまま放置されていた。





 
陽の光が中天から少し西に傾きかけた頃。ロンフォールの森を



三人の冒険者が注意深く辺りを見回しながら歩いていた。



先頭を歩いていた鎖帷子の男が地面の一点を見つめ、


そちらへ駆け寄った。


かがみ込んで熱心に地面を調べている。



「何か見つけたのか?アヴァロン。」


革鎧のエルヴァーンの男マルレーンが声をかける。



「子供くらいの足跡だ。タルタルのかもしれねぇ。」



「周りにたくさんの大きな足跡があるわね。」


白い法衣の女性が言った。



「まずいことになったようだ………。


 こりゃ、オークどもの足跡だぜ。」


そう言ってアヴァロンが立ち上がった。



「とにかく引き受けちまったんだ。追跡して骨だけでも


 拾って帰ってやるしかあるまい。」



マルレーンは腰の剣を確かめながら言った。



「今夜の飯がまずくなるようなこと言うなよな。」


アヴァロンが言い返す。


女性の冒険者が白い法衣の頭巾をまぶかに被り直し、


祈りを捧げるように腕を組んで目を閉じた。









オーク達のテントの中から可愛らしい顔が外を覗いた。



そのわきからもうひとつの顔が


外を覗こうとひょっこり出てきた。




「おい、どうだルッピ。オークどもはいるか?」



「大丈夫みたいだ。……………。



 おい!アレを見るだ!!」



「え?どこどこ?あっ、何してんだ?アイツ?!」




断崖の上に一人のエルヴァーンがいた。


全身、真っ赤な貴族服に身を包んでいる。


真紅のブレザーに


真っ白のブラウス、胸にのスカーフをたらしている。


貴族の家名を表す紋章をあしらう部分は無地のままだった。


真っ赤な帽子に白い羽を飾っていてなかなかおしゃれである。



その赤い服の男、崖の上に立って何をしているのかといえば、


長い、しなる棒の先に糸を付けてたらしていた。




 

「何だアイツ。こんなところで釣りなんかしやがって。


 オーク達はどうしたんだ?」


 
「あ!あそこだぁ。」



ルッピが指した方向からオークが二匹、のそのそと歩いて来た。


赤い服のエルヴァーンに近づいて行くが、



エルヴァーンは全く気にしていない様子だ。


「おい。やばいんじゃないのか。あの赤ふく男。」


「オラが、このナタで助けるだぁ。」


「そんな重いナタ、お前に使いこなせるわけねーぜ。」


 二人がそう言っている間にもオーク達は


赤い服の男のすぐ後ろまで迫っていた。


 
オークに襲われる!


 
と、二人は息を飲んだ。



しかし、オーク達はその男の方へ視線を向けはしたものの、


全く襲い掛かろうとせずに、そのまま行ってしまったのだった。



赤い服のエルヴァーンはオークなど気にも留めず、


釣りに集中している。




「おい、あの男。とにかく、ただ者じゃなさそうだ。


 アイツに助けを求めよう。」



「そ、そだなぁ。」


ルッピ達は赤い服のエルヴァーンに、ひょこひょこと近寄った。


ルッピはオークのナタを抱えながら話しかけようとする。



赤い服のエルヴァーンはそれでも、黙って釣りを続けている。


「あ、あのー。」


「ん?俺に何か用?」


男の腰ほどの高さしかないタルタルが必死に話しかける。


「オラ達、オークどもにさらわれて


 こんな所まで連れて来られちまっただぁ。


 この辺りはオークがうろついとるだで


 オラ達を助けてくれねぇべか。」


赤い服の男は、ルッピの顔を見下ろした。



「別にいいけど、君達の名前は?」


「オラぁ、ルッピ・ジュッピだ。」


「そっちの巻き毛のチビは?」


「タルタルに名前をきく時は、まず自分から名乗れよな。」


チビと言われて明らかに不機嫌だ。


「俺の名前?はは。忘れちまった。」


「じゃあ、俺も教えねーぜ。」


巻き毛のタルタルの青年は意地を張っている。


エルヴァーンの赤い服の男は釣竿をしまい込みながら答えた。



「君達を助けてやってもいいけど、俺はここで人を待ってるんだ。


 その人が来るまでいいかな?」


「何言ってるんだよ!お前!!


 こんなオークどもの住処のまん前で


 待ち合わせなんてするバカがどこにいるんだよ!!」


「ここにいるじゃないか。」


赤い帽子を被り直しながらエルヴァーンは苦笑いした。


「俺はバカだからな。」


「あのなあ………。げっ、またオークだ!」


今度は三匹のオークがやって来る。


二匹はナタを持っているが、一番後ろの一匹は長い杖の


ようなものを持っている。


「まずい!隠れなきゃ!」


あわてるタルタルたちを尻目に赤い服のエルヴァーンは冷静だった。


彼は両手で不思議な形の印をつくり、不思議な言葉を唱えた。


「дйвфжл……」


すると、ルッピ・ジュッピの姿が風景に溶け込むようにかき消えた。



「オラ、どうなっちまったんだ?」


ルッピは訳がわからず混乱している。

 
巻き毛のチビタルタルがそれを見て言う。


「何だ。お前、魔法が使えたのか。俺にもその姿隠しの魔法


 かけてくれよ。」


巻き毛のタルタルはニッと笑った。


「名前がわからない奴にはこの魔法はかけられないんだよ。」


「ええー。それを早く言えよ!オークが来ちまう!」


巻き毛のタルタルはあわてて、必死でオークのテントの中に隠れた。





三匹のオークも赤い服のエルヴァーンに襲い掛かる気配はなく


現れた方角と反対側へ行ってしまった。



巻き毛のタルタルはテントから顔を覗かせてオークが行ってしまったのを


確認すると出てきた。



「なあ、お前はどうしてオークに襲われねーんだ?」


「さあ?何でだろうな?」


二人が話しているとオークが向かったのとは別の方角から近づいてくる


人影があった。


「あれ?誰かくるぞ?お前、本当にここで待ち合わせしていたのか?」





やって来たのは一人のエルヴァーン。髪の毛は少し長めでボサボサの髪の毛。


真っ白な派手な分厚い鎧を身にまとい、マントをなびかせて歩いて来る。


腰には長めの片手剣が提げられていた。



「遅いじゃないかヴァーミリオン。待っている間に


バストアサーディンが20匹も釣れたぜ。」


「そうか。ナイスだ。ユッキー。後で食おう。


……………ところでそのチビ助は新しい仲間か?」


ヴァーミリオンと呼ばれた、たくましい体つきの白い鎧のエルヴァーンは


タルタルを見てたずねた。

 
赤い服のエルヴァーンを”ユッキー”と呼んでいる。


エルヴァーンはそんな簡単に発音できる名前ではないだろうから


恐らく愛称だろう。


「仲間と言うよりもお荷物が二つ増えた感じかな。」


「このタルタルがお荷物?」

 
そう、首をかしげたヴァーミリオンの目の前に、姿隠しの魔法がきれて


ルッピ・ジュッピが姿を現した。


「オラ、ルッピ・ジュッピといいますだ。」


オークのナタと野兎を大事そうに抱えるルッピを見て


「なるほど、確かに荷物は二つだな…………。」


とヴァーミリオンは真面目な顔でつぶやいた。








ロンフォールの森の外れ、オークの砦に近い場所で三人の冒険者達が


小声で話し合っていた。陽はだいぶ西に傾いている。




「おい、この、そこかしこに建っている旗の様なものは


オーク達が目印にしているものなんじゃないか?」



「タルタルらしき足跡は見失ったがオークどもの足跡が


そこらじゅうについているぞ。」


鎖帷子のアヴァロンがきゅうに目を細め、


背中にくくっていた大きな弓を両手に構えた。



「おい、オークの臭いがしやがる。この先がクサい。」


 
それを聞いた革鎧のエルヴァーン、


マルレーンはショートソードを鞘から抜くと、


物音を少しもたてずに木の陰から陰へと移動していった。



弓を構えたアヴァロンと白い法衣の女性は静かに慎重にゆっくり歩いて行く。




突然、若者の前方五メートル程度の草むらがガサゴソとゆれた。


アヴァロンはそちらに弓を構えて立ち止まった。


法衣の女性は杖を持って両手を自然な高さに上げた。



ΩXAγω!!


草むらの中から獣の吠えるような声で呪文を唱える声がした。



アヴァロンの目の前が突然真っ暗になり、い霧のような

 
煙のようなものが彼の顔を覆った。



法衣の女性はそれを見てあわてることなく、両手を組み


小声でなにかつぶやく。


すると、アヴァロンの顔を覆っていたい霧が消滅した。




そこで、アヴァロンは弓のつるをきつく引き絞ると矢を放った。



草むらの中から、ぐえっ! と豚の鳴くような悲鳴があがった後、


巨大な人型の獣が飛び出してきた。



顔に赤い線の紋様が入った仮面を被って醜い獣の顔を隠している。



手には長めの杖を持って、無茶苦茶に振り回している。




アヴァロンがもう一本、矢をつがえて放った。




ひゅん。


オークの左手に命中して、オークは


左手に持っていた杖を落とした。




次の瞬間、オークの背後の木陰からマルレーンがいきなり



現れて、大きく振りかぶった強烈な一撃を獣人に向かって振り下ろした。



ガシュッ!!



不意打ちが完璧に決まり、その一撃でオークは声も上げず絶命した。



首筋を後ろから切断する見事な剣筋だった。



「いい仕事だ。マルレーン。」


「お前こそ、いつも見事な腕前だ。アヴァロン。」



二人は会話とともに視線を交わした。


アヴァロンは向きをかえると、法衣の女性に話しかけた。


「助かりました。シスター。


さっきのは白い魔法と呼ばれる技ですね。」



ヒュームの若者アヴァロンは弓を背に留めながら言った。


「ええ、最近手に入れた魔法の書に書かれていた


イレースという新しい呪文です。」



「その呪文があればオークどもの闇の魔法に対抗できますね。」



二人の会話をよそに、オークの死体をさぐっていたマルレーンが


いクリスタルを見つけた。


く輝く、あやしい美しさである。



「こいつは珍しい。闇のクリスタルか。


オークのような下等な豚どもの中にも魔法を使うやつがいるんだな。」



「闇のクリスタルは、ものを腐らせる魔力があるらしいぜ。」


「そんなもの役に立たねえな。捨てちまうか。」


それを聞いてシスターと呼ばれた女性は声をあげた。



「いいえ、役に立ちますわ。腐らせて発酵させる食べ物を


つくったり、革をなめすのに使えますわよ。」



「そうか。じゃあ、こいつはシスターが持っていてくれ。」



マルレーンは女性にクリスタルをわたした。


三人は身を軽く整えると、用心しながら歩き出した。



 



一方、その頃、ゲルスバ砦にあるオークのテントの中から


話し合う声が聞こえてくる。


「正気か?ヴァーミリオン。」


「ああ、俺は本気だ……。」


「バゴデを倒すなんて無理だ。奴はオークの王なんだぜ。


そこら辺をうろついている豚野郎どもとはワケが違う。


 オークといえども奴らの一族をまとめ上げた英雄なんだぜ。」


 「英雄といえども腕も足も二本。頭は一つしかない。


 全部、剣で撥ねちまえば問題ない。」


「問題はそれだけじゃない。王の側にいつもくっついてる


 オークの魔術師が大問題だ。奴の魔力は底が知れない。」


「その魔法を封じるのがお前の役目だ。

 
  あの闇の王でさえ、お前の魔法で沈黙したじゃないか。」


「あれは運が良かっただけだ。


 それにあの時は二人じゃなかっただろ。」


「では、新しい戦力を連れて来い。」


「俺、友達いねーよ。」


「さみしいな。ユッキー……。


 では、ギルドのメンバーを招集しよう。」


え。ヴァーミリオンは友達じゃないのかよ。
 


ヴァーミリオンは腰につけていた貝殻のアクセサリーを


口に近づけて、それに語りかけた。


「ギルドメンバーの諸君。今、私とユッキーはオークの王を


討つべくゲルスバ砦へきている。


諸君らも至急、馳せ参じて参戦せよ!」


やや間があってから、貝殻のアクセサリーから返事が返って来た。


「えー、そんな重要な作戦があるなら、もっと前もって


 言ってくれなきゃ困りますよぉ。


 こっちも準備があるんだから。」


若い男の声だ。声からして十代後半から二十代前半といったところか。


「ユニ・ユニか。バゴデのもっている魔斧ジャガーノートは


 欲しくないか?奴の首を獲った者にその権利を与えよう。」



「別に欲しくないですよ。でも参戦します。」


 次に聞こえたのは陽気な女性の声だった。
 

「ウチは黒魔法を準備して行くニャ。


 ちょうど、移動魔法デジョンを使えばすぐ着くニャ。」


「俺も参加したいんすけど、俺の未熟な腕でも大丈夫でしょうか?」


 男性の声が自信なさげに言った。


「構わん。来い。」


ヴァーミリオンは彼に自信をつけるように言った。



「私は足手まといになるから辞めとくわ。


 みんな、死なないでね。」


落ち着いた女性の声だ。


「ヴァーミリオン卿、私めも馳せ参じます。」


貝殻から次々と声があがった。


「これでモンクはなかろう、ユッキー。


 今夜、作戦を決行するからな。」


ヴァーミリオンは決意を新たにした。



ユッキーは、やれやれというように帽子を被りなおした。





その日の夕暮れ時。


テントの前に三匹のオークの死体が転がっていた。


どれも、一撃で首を撥ねられていた。 



その横に黒塗りの鎧に身を固めたヒュームの男と白い鎧の


エルヴァーンの女性が見張りをするために立っていた。


テントの中では話し合いが行われていた。



「ユッキーとディー、ユニ・ユニの三名が各員に姿隠しの魔法を


 使い、全員でオークの王のいる玉座まで潜入。


 直ちにこれを殲滅する。


 作戦は以上。」


 ヴァーミリオンが言い放った。


「アホなエルヴァーンでも考え付く単純な作戦だな。」


ユッキーがケチをつけた。


「じゃあ、他に作戦を考えてくださいよ。」


紫色の洒落たデザインの鎧に身を包んだエルヴァーンの若者が


ユッキーを責めた。


ユニ・ユニは普段は背中に不思議な形をした槍を


くくり付けていたが、今は座っており、槍は横に置いてあった。


「ユニが考えろよ。お前、頭いいだろ。」


「ヴァーミリオンの考えた作戦でいいと思いますよ。」


「で、いつごろ作戦開始なのニャ?」

 

つばひろのイカした帽子を被ったネコ耳のミスラの女の子が


ヴァーミリオンにたずねる。身軽な黒地の服を着ている。


恐らく戦いには直接は参加しない魔法使いであろう。


「全員が夕食を摂った後、休憩してから、即出発するぞ。」


ヴァーミリオンは、やる気満々といった表情である。


ユッキーは、上ので帽子の羽飾りをいじっていた。




各自がそれぞれ夕食を摂っている。


ヴァーミリオンは干し肉をかじっていた。


ユニ・ユニは豪華な串焼料理を持参していた。


「あ、それミスラ風じゃん。一本ちょーだい。」


アップルパイをほお張っていたディーがユニ・ユニの串焼を


一本、奪うようにして口に入れてしまった。


「あぁー、あげるなんて言ってないのに。」


ユニ・ユニは不満そうな表情であった。




赤い服のユッキーは釣り上げた魚が大量に入った桶を


目の前に置いて、それを無言でじっと眺めている。
 

ルッピ・ジュピと巻き毛のタルタルは腹をかせて黙っていた。




黙っていたユッキーがとうとう口を開いた。



「あのー、誰かこれ料理できる人いない?」


ユニ・ユニが半笑いの顔で言う。


「ユッキーさん、料理できないのに、そんなにいっぱい


 釣ってどうするんですか?」



「釣ってから、生で食えない事に気が付いた。どうしよう。」


「塩ふって焼くだけでおいしく食えるニャ。ハイ、お塩。」


そういってディーがふところから塩の入った袋を取り出した。


「かたじけない。」


ユッキーはふところから真っ赤なクリスタルを取り出した。


ゆらゆらと炎のような熱い輝きだ。


魚を紙の上において軽く塩をふる。


赤いクリスタルを手に握り締めて、粉々に砕いた。

 
クリスタルの破片は、魚の身の上に落ちて、細かい炎を


上げて軽く燃えた。魚の身が焼けてよい香りがただよう。



それを二人のタルタルは指をくわえて見つめている。


ユッキーはバストアサーディンの塩焼きを六匹分作ると、


二匹ずつ、タルタルたちに無言で差し出した。


「オラたちにくれるだか?」


遠慮がちにいうルッピにたいして、ユッキーは無言で


うなずいた。


巻き毛の名乗らないタルタルは、すでに魚にかじりついていた。



ルッピは夢中で食べた。朝から何も食べていなかったから、


苦手な魚でも、とてもおいしかった。



腰に提げている可哀想なロンフォール兎も、


クリスタルで料理したら、うまいのだろうか。




ディーとユニ・ユニはいちはやく食事を終え、


外の見張りと交代した。



黒塗りの鎧の男は真っ黒な重そうな剣を持っていた。


エルヴァーンの女性はヴァーミリオンと似たような


白い鎧を着ていた。鎧のあちこちにサンドリアの正騎士の


証である紋章が入っていた。


ヴァーミリオンの鎧と同じ文様であることから、


同じ部隊か、同じ階級なのではないだろうか。


二人は遅れて食事を摂った。


それぞれ、男はおにぎりを、女性は干し肉を食べた。




食事を摂り終えると、皆はそれぞれ横になったりしてくつろいだ。



しばらくして、ヴァーミリオンがむくっと起き上がり皆に言った。


「そろそろ、行くか。」





外はすっかり暗くなっていた。月は出ていない。



月明かりすらない闇の中を姿のない一団が


にぎやかな音をたてて行軍して行く。



 
途中でニ、三匹のオークに出くわす事が何度かあったが、


なんとかやり過ごした。



何故だか理由は定かではないがルッピだけは何回も魔法が


解けてしまって姿を現し、皆をヒヤヒヤさせた。



その度に、ユッキーやディーやユニ・ユニが魔法をかけ直した。







山の山頂付近には沢山の木材を組んで造られた、何に使うのか


よくわからないような大掛かりな装置が置かれていた。




ひときわ大きなテントが設けられており、その入り口に


見張りと思われるオークが三匹うろついていた。




岩場の陰に隠れた一団は、三匹のオークをどうしようかと思案した。



その時、ユッキーが何かに気が付いた。



 
「おい、タルタル二人組みがいないぞ。」





何と、その時。オークの目の前で、ルッピ・ジュッピと



巻き毛のタルタルの魔法が解けて、姿を現してしまったのである。


ヴァーミリオンが冷たく言い放つ。


「ここからじゃ、間に合わん。二人には死んでもらう。」



オークの見張りは三匹とも斧を持っているオーク族の戦士だった。



ルッピを一番に見つけたオークは斧を振り上げて、


 
ルッピ目掛けてそのまま打ち下ろそうとした。



あっ!



と、思うその瞬間。


テントわきのしげみから、一本の矢が飛んできた。



矢は斧を振り上げたオークの右側頭部に勢いよく深々と突き刺さり、


オークは命を失って、そのまま倒れこんだ。


 
それを見ていた二匹のオークは何が起こったのか、まるで理解できず



とまどっていたが、一匹が我に帰り、



「ウォォォォォォォ!」


と、危険を知らせる警戒の叫び声を上げた。



その声と、ほぼ同時に、


矢が放たれたしげみから三人の人影が飛び出してきた。


ルッピ・ジュッピを探していた三人の冒険者、



剣士マルレーン、狩人アヴァロン、


そして白い法衣の白い魔法の使い手の女性だった。




それを見たヴァーミリオンの決断は一瞬で下された。




「よし、前衛、突撃せよ!



魔導師は魔法で援護を頼む!!」


赤の魔導師、ユッキーの反応は素早かった。


 
「ΩXAγω!!」
 

オークのお株を奪う、闇をつくりだす黒魔法、ブラインを


手の印を一瞬で結び、即発動させた。



オークの魔術師が使っていた、


暗闇をつくって視界をさえぎる魔法だ。


一匹のオークが暗闇で顔を覆われ、とんでもない方角に


向かって攻撃している。


当然、振りだ。



 
外の騒ぎを聞きつけてテントの中から、


三匹の大柄なオークが現れた。



その中でも一番大きなオークは碧眼で、


片方の目が古傷で塞がっていた。



手には不気味な鋭い光をあやしく放つ魔斧、


ジャガーノートがしっかりと握られていた。


オークの王、バゴデだ。


ジャガーノートは持つ者に不思議な力を与える


といわれている。



やつが王になれたのもこの魔斧の魔力なのであろうか。



「王の攻撃は俺が引き受ける。


まずは他のザコどもをかたずけろ!」


ヴァーミリオンの命令に従がい、


皆はオーク達に対峙した。




ユニ・ユニは槍でオークと距離を採りつつ、


ニ撃、三撃と加えていく。


ユニ・ユニが大きな声で気合の声を上げつつ一撃を



 
放つと、上を舞っていた小柄な竜が降下して来て


オークに炎の息吹を吐きかけた。


オークは黒コゲになって絶命した。


ユニ・ユニはそのドラゴンの相棒に手をふって答えた。



黒光りする鎧に身を固め漆黒の剣を両手で中段に構えた


男はオークの攻撃をひらりひらりと、体をさばいて


かわしていた。



そこに黒魔導師ミスラのディーが後方から、爆炎の魔法を


撃ち込んだ。


黒炎に包まれたオークの動きが止まった。


そこへ黒剣の男が素早く、太刀を打ち下ろした。


斬!!


ひるむオークに向かって白い鎧のエルヴァーンの女が


間髪いれずに片手剣の軽く速い一撃が追い討ちをかけた。



素早い剣戟によって火花が散り、突風が巻き起こる。


 
そこへユッキーとディーが黒の攻撃魔法を撃ち込んだ。


激しい光と衝撃のかたまりと渦に巻き込まれて、


オークは憤死した。

 
オークの死体がまたひとつ増えた。



 
オークの魔術師が長い呪文の詠唱に入って集中していた。



オークの王と対峙していたヴァーミリオンは、


その呪文の響きを何気なく聞いていたが、


突然、あの時の悪夢がよみがえった。


今でも夢にうなされる黒い、あの闇に包まれたモノ…………。



ヴァーミリオンは、はっ、と我に帰った。



「メテオだっ!メテオが来るっ!逃げろっ!」



恐らく最強の攻撃魔法と思われる、究極の魔法 メテオ。



のさらにその上に浮かんでいるといわれている


星々の欠片を召喚し、敵の頭上に落とすという


恐ろしい古代魔法の究極のもののうちのひとつだ。



くらったら、運が味方しなければ死にいたる。


誰もが死を覚悟した。





しかし、あきらめていない者が一人いた。



マルレーンがいつの間にかオークの魔術師の背後をとっていた。


得意の不意打ちをくらわせる。



ガシュッ!!


強烈な一撃をくらって魔術師は呪文を唱えられなくなって


その場でよろめいた。


「ナイスだ。シーフの君!」

「ナイスだ。シーフの君!」


ヴァーミリオンとユッキーは同時に同じ言葉を発していた。


マルレーンの勢いづける一撃で皆は持ち直したかにみえた。



オークの王と対峙していたヴァーミリオンは盾で上手に


攻撃を受け流してはいたものの、鎧の継ぎ目を


鋭く狙う攻撃を何発か受けていた。


少なからず流血している。自身にかける回復の白魔法ケアルに


使う魔法力も底をつきかけていた。


「ユッキー、回復を頼む。」


ユッキーより先に白魔法の癒し手が回復魔法ケアルを唱えていた。


ケアルを準備していたユッキーは


呪文の詠唱を別の魔法へと切り替えた。



魔法は白い法衣の女性への回復魔法だった。





傷を負っていない彼女を回復してどうするのかって?


いや、そうではない。



彼の使った魔法は失われた魔法力を回復させる呪文、


リフレシュだったのだ。


赤と青の螺旋状の光のオーラが彼女の体を下から上へと、


駆け巡って、魔法力を徐々に回復させて行く。


「ありがとう。ユーキャスライト。」


白い法衣の女性はユッキーをユーキャスライトと呼んで


感謝の意を示した。


 
頭にかぶっているフードをとったシスターの顔を見て



ユニ・ユニが声を大きくした。


「ユーリアスさんじゃないですか。お久しぶりです。」


「無駄口叩いてないで、目の前の敵を叩くのニャ。」


黒魔導師のディーは、余裕をみせている。



「おい、ユーキャスライト。その回復魔法、俺にも頼む。」


巻き毛のチビタルタルが、いつのまにかユーキャスライトの


そばまで駆け寄って来ていた。



ユーキャスライトは、タルタルにリフレシュをかけた。


青と赤のオーラがタルタルの小さな体を包む。


チビのタルタルは精神を集中するように目を閉じる。


 
しかし、呪文を唱えるようなそぶりはみせなかった。


 
突然、彼の頭上の中の一点に空気がグググッ、と集まっていった。


ものすごい、風が巻き起こり、空気の流れが出来る。


 
風の中心に、鳥の姿をした女性のような形の光のかたまりが現れた。



「行け!セイレーン!オークどもをブチのめせ!」


セイレーンと呼ばれた、光のかたまりが羽をはばたかせると、


風にのった真空のかたまりの刃がオークたちのまわりを

 
飛び交い、オークたちを切り刻んでいく。



「あのタルタル、何者だ?!!」


その場にいた全員が息をのんだ。




「見たか!これが太古に忘れ去られた、幻の業。召喚術だ!!」


 ヴァナ・ディールの風の根源、セイレーンを従えし者。


 ルーツ・ルーツ様とは俺の事だぁ!」


巻き毛のタルタル、ルーツ・ルーツは興奮して、


ピョンピョン飛び跳ねながら叫んでいる。





オークたちは死体になった。



…………………………………。




かのように、誰もが思ったが


ヴァーミリオンとルーツの間に倒れていたバゴデが


むくっ、と起き上がってルーツへ魔の一撃を放った。




さすがにヴァーミリオンは即ざま反応した。


「神よ。ご加護を!!」


ヴァーミリオンの鎧の胸元に埋め込まれた宝珠が

キラリとまぶしく輝いた。



ヴァーミリオンの剣はバゴデの利き腕を切断していた。



オーク王の左腕は魔斧をしっかりと握り締めたまま、


地面へ、ころがった。





「グルォォォォォオオ!!」


決定的一撃を加えたと思いヴァーミリオンの肩から


力が抜けた。


気を抜いてしまったヴァーミリオンに、


バゴデが体当たりをくらわせる。


かろうじて盾を構えたものの、体当たりをまともに


受けてしまい、ヴァーミリオンはバランスをくずした。


 
どっ、と倒れこむヴァーミリオン。



バゴデは残った右腕で、そこに転がっていた左腕の


握っていた魔斧、ジャガーノートを奪い取り、


ヴァーミリオンの首を狙う。



あぶないっ!





しかし、そこへ鋭い衝撃がバゴデの体を貫いた。




狩人アヴァロンの放った弓の強烈な一撃が、


バゴデの胸に深々と突き刺さっていた。





矢は心臓まで達していた。


オークの王、バゴデは今日で、その短かった一生を終えた。








 …………………………。サンドリア港、野兎の逆襲亭。





給仕のサルバドールは、羽振りのいい客たちに


ビールやワイン、様々な料理を運びながら冒険者たちの


話を楽しく聴いていた。




「で、そのオークの王が持っていたという


魔斧ジャガーノートはどうなったんですか?」


誰かが尋ねた。


 
弓を背負ったヒュームの男が、黒ビールをひとくち


飲みほすと、しゃべりだした。



「俺の矢が、とどめになったってんで、


俺のものになったんだけど、ある人にあげちまったよ。


あんな恐ろしいもの平気で使うヤツの気が知れねーぜ。」





皆が酒を酌み交わしている中で、赤い服のエルヴァーンと


白い法衣の女性が、かた隅の席で向かい合って座っていた。



二人ともワインの杯を手にしている。


「あの戦いの後、あなたたちはどうしていたの?」



ユーリアスがエルヴァーンにたずねた。


「あの戦いって、いつの戦いのことだ?」


赤い服のエルヴァーンは室内にもかかわらず、


頭に白い羽飾りの付いた赤い帽子を被っていた。



「決まってるじゃないの、北の魔城で


 闇王を封印したはずの戦いよ。」


 彼女は、封印した”はず”と言った。



「ああ、あの時も君は一緒だったな。


 ヴァーミリオンとディーにユニ・ユニ、


 もう一人、名前は忘れちまったが、タルタルの

 黒魔導師も一緒だったか。」




「あの後、闇王の謎を解くために、ヴァナ・ディール中を


 旅してまわったわ。あの二人とはバストゥークで出会ったの。



 ユーキャスライトは、どうしていたの?」


「俺?俺は…………。」


話をしながら、ユーリアスはワインを口に運んだ。


「俺は、釣りにハマってた。」



ユーリアスは渋そうな顔をした。





調理場では三人のタルタルが忙しく働いていた。


親父のロッピは包丁でハーブを細かく切り刻んでいる。


おふくろのシャルルは、いつものごとく煮えたぎる鍋の中の


スープを熱心にかきまわしている。




ルッピは今回の大冒険で手に入れた戦利品の使い心地に満足していた。


「このナタ、よく切れるだなぁ。」


ルッピは笑顔で肉を切っていた。


これからは仕事が、はかどりそうだ。



魔斧ジャガーノートの切れ味は、兎のもも肉を切るのには、


もったいないほど、素晴らしかったのであった。


                  THE END









おまけ


イメージBGM

大塚愛 CDアルバム

「LOVE PiECE」収録

「Mackerell's canned food」





「ヴァーミリオン」



俺は誰も愛さない。

そんな俺が皆から愛される存在なのは

何かの皮肉なのか。



信頼できる友はいない。

信頼できる仲間はいない。


そんな俺が皆から信頼される存在なのは

何かの間違いなのか。





ただ、俺は


皆が好きだ。




ただ、それだけだ。




「ユニ・ユニと相棒」


始まりの時がいつだったのか

永遠に続くかと思われる まどろみの中で

私は 光というもののない 世界にいた。



硬い殻に こもって眠り続ける。

形のない 思考の波は 心地よい リズムだ。


………………………。



最近、眠りが浅くなったような気がする。

居心地の良かった この空間が 妙に あつい。


寝返りをうつことが 出来なくなった。

この殻を 破ってみようと思う。




ゴッ

ゴッ

ゴッ

パキッ、ピシッ




大きな白い殻を 破って現れたのは…………。



ユニ・ユニが間の抜けた笑顔になって喜んだ。



「生まれた!生まれましたよ!!

 ドラゴンだ!!見てください!

 小さなドラゴンですよ!!」



小さなドラゴンの誕生。


竜騎士ユニ・ユニの誕生の瞬間でもあった。





「ユーキャスライト」


剣の修行も魔法の修行も大好きだった。

それで、どちらの道に進むか決められなかった。



騎士にもなれず。

 
魔導師にもなれず。



剣も魔法も、とうとう一番には、なれなかった。



いつも一番の気に入りの赤い服を身にまとって戦っていた。


そんな私は、いつしか、こう呼ばれていた。



最強の 赤魔導師、と。




「剣士、アヴァロン&狩人、マルレーン」


一撃で、


決める。




「黒い鎧の男」



斬る。それが俺の生きがい。






「黒魔導師ミスラ、ディー」



魔法を究めたら、


次は、食の道を究めるにゃ。





「白い鎧の女性エルヴァーン」


貴方に従っているのは、

貴方の事が好きだからです。


気づいてください。ヴァー○○○○。





「白の癒し手、ユーリアス」



私は、皆を元気にしたい。

そして、私も元気でいたい。


それには、愛が重要なんじゃないかなぁ。



「召喚師、ルーツ」



俺には友達が一人もいなかった。

風だけが唯一の友達さ。


そして、俺は風になった。


……………………………。






なんちゃって。

俺は、死んじゃいないぜ。

そして、今では、皆が友達だ。




「料理長、ロッピ・ジュッピ&シャルル」


ルッピのアホたれめが。

兎一匹しか獲れねえで、何しとっただか。



「給仕、サルバドール」


うちの黒ビール、ちょっと高いけど

値段分の味は、保証しますよ。




「ルッピ・ジュッピ」



オークは怖いだども

それ以上に、冒険者の方が恐ろしいだよ。


ああ、このナタ、素晴らしい切れ味だぁよ。



おしまい。

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流刑地ひとものがたり

  惑星エデン





  彼女と出会ったのはこの星の真ん中。



  






  僕は、この星の皇子。




  最初の記憶は白、黒、血の赤。そして、の青。




  神は罪を犯した僕になぜか最高の地位を与えた。




  僕は日々戦いの中で生きている。





  この星の長い長い歴史の中で僕は常に男であり続けた。




  


  






  最初の男はアダムと呼ばれる人であった。




  その次の人は女という者にしたかったと神はおっしゃられた。



  しかし、神の手によって創られた女は人のかたちをなさなかった。



  その人であって人でないもの、それは


  イヴという、をなすモノであった。







  人は何故、を求めるのか。人は何故、戦うのか。





  アダムよ、イヴと子をなせ!


  この地を楽園につくりかえよ。






  人の姿をもたぬイヴ……………




  彼女の想いがきこえる。




  アダム………、この星のモノを従がえ




  私のカラダを成してくれませんか………。




  イヴというモノよ。おまえは不思議な声をしているな。



  アダム。あなたは心とカラダ、



  そして勇気と知恵というものを持っているようです。



  あなたの発するココロが声となります。



  わたしのカラダ……………あなたにふれてみたい………


  



  と、土がかたまり、アダムに似た形になりました。



  アダムは土にふれました。


  わたしのカラダをととのえてくださいませんか。



  アダムは土のカラダにやさしくふれ、


  
  素敵なかたちをつくりあげました。



  すこし、あなたとちがうところが、わたしらしい、


  
  女らしいということですね。



  

  わたしのカラダはからからの土です。


  このままでは、すぐに崩れてしまいます。



  アダムは神に問うた。


  イヴに命をあたえるにはどうすればいいのだろうか?


  

  この星に住む4人の悪魔と契約をせよ。




  土、水、火、風の4大悪魔を従がえよ。





  イヴのなかに悪魔がいる。土の悪魔であった。



  アダムよ、この素敵なカタチとひきかえに、イヴに命をあたえてやろうか?



  悪魔よ。人はカタチをなさねばならぬ!


  イヴのカタチとひきかえではダメだ!





  では、お前のその素晴らしい声とひきかえだ!


  そうすればイヴに命をあたえよう!




  よいだろう。声をやる。イヴを生かせ。わたしに従がえ!




  イヴの土のカラダに命が芽生え、かたちが崩れなくなりました。



  
  アダムよ、土のカラダが冷たくて冷たくてパサパサで、心もさむいです。



  水と火のチカラをワタシに宿してくださいませんか。


イヴのなかの悪魔は言った。


  水というものを見てみたいものだ。


  さわってみたらどんな感じなのだろう。




  土ばかりの大地に立ってアダムは感じた。

  イヴの息づかいを。


  おお、イヴ!命があるのだな。



  ああ、アダム!あなたの声がきこえない。

  あなたは どこにいるの?


  ここにいるではないか、君のすぐそばに。



  君というのは何?
   

  イヴのことだ。

  
  アダムは私のことが感じられるの?


  私は君が見えるし、ふれることもできる。


  アダムはイヴの手をそっと握りました。


  私が感じられるか?イヴよ。


  わからない。わたし、あなたがわからない。  


  お前の瞳は私を映してはいるが、お前には私が見えていないのか。


  イヴのなかに宿る悪魔よ。イヴの目を見えるようにしろ。


  イヴの瞳に光を宿せ!


  悪魔は言った。


  それは私にはできません。



  アダムは考えました。




  アダムは土を掘ることを思いつきました。


  何の役に立つかはわからぬが、とにかくやってみよう。


  アダムは土を掘り返しました。


  

  イヴはアダムが何かに没頭しているのを感じてききました。


  アダム。何をしているの?


  土を掘るということを思いついた。イヴも手伝ってくれ。




  二人は夢中で掘りました。



  
  すると土の中からなにかカタチの定まらないものが現れました。



  この不思議なものは何だ?


  アダムの問いにイヴは答えました。



  水というものじゃないかしら。


  イヴは水を手に取り口にふくみました。


  アダムはそれを見て真似をしてみました。


  そのあまりのすがすがしさに



  アダムの瞳からも同じようなものがあふれ出ました。


  水のなかの悪魔が言いました。


  
  それはというものだ。  




  アダムとイヴよ。お前達のと引き換えに水というものに


  お前達を癒すチカラをあたえてやろう。




  水を飲めば元気が湧き出し、カラダを水で清めれば病を防げるであろう。


  と、水の悪魔は言います。



  アダムはを悪魔にとられたくありませんでした。



  そこでアダムは言いました。



  これからも私たちを喜ばせてくれることがあるたびに


  私たちはお前達のためにを流すだろう。



  それをきいた悪魔は


  では、お前達が悲しんだ時にもを私たちのために


  流させることにしてやろう。



  と、契約を交わしました。



  この時のアダムとイヴはまだ悲しむということがわかりませんでした。








  この星で、はじめての朝日が顔を出しました。




  大地からあふれ出した水が土を洗うたびに水面が


  キラキラと光り輝きました。


  その光景にイヴが初めてを流しました。





  イヴよ。お前、目が見えるのだな?




  ああ、アダム、あなたの姿が見えるわ。



  アダムは嬉しさの涙か悲しみの涙かをイヴにききました。


  その両方だと思うわ。とイヴは笑いました。




  イヴの笑顔を見たアダムはとても驚きました。


  そしてアダムにも喜びが満ちました。



  エデンに陽が上ると地上はだんだん暖かくなりました。



  そして植物の緑が少しずつ芽生えたのでした。


  やがてその緑のなかのひとつがきれいな色をつけました。



  イヴはそれを見て笑い、喜んでそれをアダムの顔に近づけて



  これは  はな  だと思うわ。


  と、言いました。



  たしかに はな だ。

  アダムはそこで初めて笑いました。





  アダムは太陽の暖かさをとても好きになりました。



  イヴの冷たい体も、もっと温かければ良いと思いました。




  そこで、イヴは言いました。


  私たちのカラダを暖めてくれる火をつくってください。



  アダムは火がどのようなものかよくわかりませんでした。



  当然、つくりかたもわかりませんでした。



  アダムは天に問いかけました。



  神よ。イヴのいう火というものは



  どうすればつくることができるのですか?



  すると天がみるみる曇り、雷がどどーん!と草むらに落ちました。



  草は炎をあげて燃えました。



  これが火というものか。



  近よるととても熱い。


  火は危険なものだな。



  アダムは木の枝を手ごろな大きさに折り


  火に近づけてその枝に火を移しました。


  そうしてイヴのもとへ火を持っていくことができました。



  その日の夜は陽が落ちてからも明るく、暖かくすごせました。



  火の悪魔はあたたかく語りかけてきました。


  お前達の持つ心を私にくれ。



  アダムは悪魔にききました。



  かわりに何をくれるのだ?


  火の悪魔は言いました。


  私自身が役に立つ。


  いろいろなものを焼いてみろ。


  アダムは言いました。


  では、心を半分だけお前にやろう。





  心を半分、失ったアダムとイヴは眠ることで


  失った心のかわりとしました。





  神の与えてくれた火というものはアダムとイヴのくらしに


  とても役にたつものでした。




  そのままでは食べられない草木も



  焼くことで食べられるようになりました。



  アダムはイヴをかたちづくったように土と水でいろいろな


  かたちをつくり、火で焼くことによって様々なものをつくりだしました。



  焼きものには、人や草木や動物のかたちをしたものもあれば


  食器などの土器のたぐいの実用的なかたちをしたものもありました。




  雷から得た火はある時、


  うっかり木をくべるのをわすれて消えてしまいましたが



  アダムが石と石をこすって火花を散らし、


  燃えやすい おがくずから火がおこせました。


  
   




  その日はが曇っていました。



  草木がさわがしいです。


  動物達も落ち着きがない様子でした。



  アダムとイヴが一番気に入っていた大きな木に


  白っぽい薄紅色の花がひとつ咲きました。




  その花はふたつ、みっつと日ごとに数を増していき


  二日後には木全体をおおいつくすほど咲きみだれました。







  次の日、この星に初めて風が吹いたのです。






  白い花ビラは一枚一枚散り乱れ舞い落ちていきました。




  その光景を見てイヴは涙を流していました。







  そこへ一匹の蛇が木の枝をつたいおりてきました。




  イヴよ。


  この木にやがて双子の実が結ばれるであろう。



  それをお前達でひとつずつ分け合って食べよ。



  そうすれば二人を結ぶものが生まれることになるであろう。





  イヴは蛇に問いかけました。


  あなたはどうして言葉が話せるの?



  言葉は私とあの人だけのものなのに。



  蛇は答えました。




  そんなことはとるに足らないことだ。




  それよりもアダムのことが好きならば


  私の言ったことを忘れるのではないぞ。






  そう言って蛇は去って行きました。




  やがてエデンに夏がおとずれました。


  いつにも増して水が役にたちました。



  夏には天から水がたくさん落ちてくることがありました。



  イヴはその水に雨という名前をつけて喜んでいました。



  アダムは雨が降ると少し心さみしくなりました。





  やがて厳しい暑さがやわらいできました。




  イヴは


  秋が来たわ。




  と言って、とても喜びました。




  薄紅色の花を咲かせた大木に実がなりました。




  ふたつひと組で結ばれた実のかたちを見てイヴは微笑みました。




  アダム。この実を私と分け合って食べましょう。



  イヴは実を手にとり、アダムにひとつわたしました。



  アダムとイヴは甘ずっぱい実を食べました。


  その時、アダムとイヴは実の中心にあったタネを飲み込んでしまいました。




  二人は不思議な気持ちになり


  お互いの姿を見つめあいました。


  アダムとイヴのカラダに異変が現れ、二人は抱き合ったのでした。



  アダムのカラダの中の小さな命が

  イヴのカラダの中の丈夫な命と一つになりました。



  アダムとイヴに実を食べることを教えた蛇は


  風とともに現れた悪魔でした。



  風の悪魔はさみしい心と引き換えにアダムとイヴに


  カラダを交えるキモチ…………




  恋をさせたのでした。








  ふたりは





  しあわせ………でした。




                




   THE END





  エンディングイメージソング


  大塚 LOVE LETTER より



     「人形」  







  やがて二人の子供が生まれるでしょう。


  神はイヴを上手につくることができませんでした。


  イヴを人間らしくするために悪魔に手伝ってもらったアダム。



  そのためにアダムとイヴの子供らには争う気持ちがうまれ、


  人は争い戦ういきものとなりました。


  しかし、イヴがはじめからもっていたというもの。

  それは、子供らに受け継がれました。


  そして、それが人々を平和に導くものであることにアダムとイヴの


  子供たちはいつか気付くでしょう。気付いてください。 




  イヴがもっていたというもの。



  イヴは自分を大切にしてくれたアダムへ、そのをあたえました。





  何もなかった星、エデンはやがて



  アダムとイヴの子供らであふれることになるでしょう。




  人間はどこからきてどこへかえるのか。



  アダムとイヴはどこへ行ってしまったのでしょう。


  にんげんはどこへいくのでしょう。



  わたしたちはなにをするんでしょう。



  神はアダムとイヴが好きでした。




  イヴはアダムが好きでした。






  



  アダムは………、



  











  アダムはイヴのことを好きになったのでしょうか。 











                        
  作者あとがき



  いかがでしたでしょうか。


  「流刑地ひとものがたり」
  

  前回の二次創作小説ルパン三世外伝


  「未来タクシーでやってきた!?大泥棒と一枚の名画」


  に引き続き、大塚愛さんのに触発されて書き上げた作品




  かと思いきや、なんと、この作品は頭のなかに


  のことはまったく意識しない状態で書き上げました。



  しかし、作品の原型を書き終えてウォークマンを聴いていたら


  (その時、ウォークマンをシャッフル設定にしていたので)


  偶然、この曲が流れてきて、の最後の一言に感動してしまいました。



  大塚愛さんの「人形」という



  悲しい境遇の女の人たちをうたったものです。



  あまりに、このお話にぴったりくる曲だったので


  エンディングイメージソングとして曲名をあげさせてもらいました。



  みなさんのお手元にこの曲があったら是非、このお話を読み終えたあとに


  この曲を聴いてみてください。多分、私のように感動すると思います。



LOVE LETTER というCDアルバム作品に入っていると思います。




  それから、この作品を原作にした漫画作品もあるようなのですが………


  神様セイクリッドだったっけかな?


  あの漫画の作者のいっていたこと本当なんでしょうか?


  当時、漫画を読んでいた時は、私の名前と同姓同名の人が原作者なのだろう


  と、思っていました。憶えている人、いますか?


  そうです。私は石川幸博といいます。



  前回のルパン三世外伝のあとがきにも書いたように


  私の好きな人は愛さんです。


  愛さんとデートしたいです。そしてアダムとイヴのように……


  なんちって。







  最後に



  ここで、裏設定を公開、アダムはイエス・キリストその人だ!


  そして、アナキン・スカイウォーカーでもある!


  アダムはいがいと長生きしてますね(笑)



  それを踏まえたうえでもう一度読むと面白いかもよ。



  でも、私、スター・ウォーズシリーズいまだに一作品も観てません(笑)



  では、みなさん。今日のところはさようなら。

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