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「竹取恋愛物語ONE」

One LoVe story One after KAGUYA.





2007年 9月14日

月大型探査船 かぐや は H-IIAロケット13号で打ち上げられた。



2007年 10月5日

かぐや は 月周回軌道へ 到達。



2007年 10月18日

かぐや は 高度約100kmの月周回観測軌道への投入に成功。

世界初のハイビジョンカメラによる月面撮影に成功。





2009年 6月11日

かぐや は 月面 東経80.4度 南位65.5度

の位置に 制御落下。



かぐや は 月表面の 元素組成、鉱物組成、地形、

表面付近の地下構造、磁気異常、重力場の観測を行う。






One LoVe story One after KAGUYA.

「竹取恋愛物語One」      
                   作:いしかわ ゆきひろ






2009年 夏


記録的な猛暑にみまわれ、

今年の夏もすさまじく暑かった。


俺の高校生活最後の夏は、終わろうとしていた。

数も少なくなった蝉が、いきおい弱く鳴いている。


放課後の校舎は静かだった。

校庭では、運動部の連中がまだ練習中で、

かけ声がこちらまで響いてくる。


俺と友達のタクヤは、今夜花火でもしよう。

などと、にぎやかに話していた。



「ねえ、わたしたちも花火、したい。」

教室の反対側から、女子の声。

コトミとメグミだった。


「ねえ、タクヤ君、わたしたちもまぜて。」

明るく、はきはきとした しゃべり方をするのは

コトミだ。

メグミは、しずかに笑っている。


「いいよな?タケル?」

タクヤは、俺に同意をもとめた。

俺は、何となく気にくわなかったけど、

反対する理由がない。


「ん?ああ。」

「やったぁー。じゃあさ、コンビニいこ。

 おなかもへったし。買い出し。買い出し。」

コトミは、いつのまにかタクヤの後ろにまわり、

背中をトントンたたく。


前から思っていたことなんだけど、この二人、

なんか、イイ関係になりそうな感じなんだよな。


「じゃあ、俺とコトミでチャリニケツして行ってくらぁ。

 なんか買ってきてほしいもんある?」

タクヤも、まんざらでもなさそうだ。


「じゃあ、おにぎり2個、梅干しと鮭。

 それに唐揚げチキンとウーロン茶。

 花火は、小さいセットでいいからな。」

そう言って2000円をタクヤにわたした。


「ほいほい。メグミも、なんかほしいもんある?」

コトミがメグミにきいた。

「じゃあ、わたしも、おにぎり…。」

「具は?」

「えっと……。タケル君と同じでいい。」

はきはき しゃべるコトミと対照的に、

メグミは、いまいち、ぱっとしない。

だいたい、こういうふたりが仲良くなるんだよな。

女子は。



「じゃあ、250円ね。」

「お茶も買ってきてもらっていい?」

メグミは、そう言って500円をコトミにわたした。

「あぃあぃさー。

 では、いってきます。」

左手を ひたいに ななめにあてて 敬礼のしぐさを

しつつ、コトミはタクヤに視線を向けた。

かるくウィンクしたようにも見えた。



にぎやかな二人が出て行くと、

教室は、急にしーんと静まり返った。

ような感じがしてならない。


メグミと二人っきりになってしまい、少し気まずい。


俺は、教室の後ろ側の棚の上に視線を向けた。

そこには、クラスのみんなで飼っている金魚の鉢がある。


赤と黒の二匹の金魚が、ゆらゆらと泳いでいる。

その二匹の近くに緑の水草が、ふわふわ浮いている。


見ていると、少し暑さを まぎらわせてくれる。

俺とメグミは、かなり長い間、黙って金魚を見ていた。




そういえば、いきものがかりは、俺とメグミだったっけ。

俺は、金魚にエサをやることさえしていなかった。


「メグミがエサやってくれてるの?」

「え?」

メグミは突然、話しかけられて、少し戸惑っている。


「金魚だよ。俺達、いきものがかりだろ。」

「あ、うん………。毎日、エサやりとお水換えてる。」


「水?水って換えるの?」


「……うん。水が汚いと弱って死んじゃうから。

 水を換えるのは大事だよ。

 そうだ。今日もお水換えなきゃ。いつも放課後に換えてるんだ。」

メグミが、チラっとこっちを見たような気がした。

そういえば、話しているときも、全然、こちらを見ようとしない。


「そうか、じゃあ、俺も手伝うよ。」

「うん。」


メグミは、教室の後ろの棚の上に置いてあった

水が入ったペットボトルを3本かかえると、俺に

「じゃあ、タケル君は、金魚鉢持って。」

と言って、また俺の目を、チラっと見る。


二人で教室を出て水道のある手洗い場へ向かう。

歩きながら俺はメグミに話しかけた。


「ずっと、一人でやってたのか?」

「うぅん。コトミが手伝ってくれてたよ。」

「なんで、俺に言わねえんだよ。」

「え。………うん。………」

メグミは少し、困ったような顔をした。

俺は、なんだかそれ以上は言葉が出てこなかった。


俺達は手洗い場に着いた。


手洗い場で金魚鉢の水を、金魚や水草が落ちないように

水だけを気をつけながら捨てる。


金魚が泳いでいるぎりぎりのところまで水を捨てたので、

これ以上捨てるのは無理だ。


「何で、ペットボトルに水汲んであるんだ?

 水道で入れればいいじゃん。」

俺はメグミに質問した。

「水道の水だと、カルキが入ってるから、ペットボトルに

 水を入れて陽に当てておいてカルキを抜くの。」


「カルキ?カルキってなに?」

「え?えーっと………。わかんない。」


また、メグミを困らせてしまった。


「まあ、いいや。早く水入れて、金魚が弱っちゃう。」

「うん。」

メグミがペットボトルのキャップを回して開け、

金魚たちの頭上から水を注いだ。



ペットボトル2本分の水を入れたら、

金魚鉢のほとんど七割がた水が入った。


「もう、いいんじゃねえの?」

俺はメグミにきいてみた。

「うん。じゃあ、先、行ってて。

 あたし、水汲んでから行くから。」

「おう。わかった。」


俺は、水がこぼれないように気をつけながら

金魚たちを鉢ごとかかえこんで運んだ。


教室に入り、後ろの棚に金魚鉢を置いた。

けっこう、重かったし、水がこぼれないように

運ぶのは、気をつかう仕事だ。

こんな大変な作業を、女の子にまかせっきりにしていた

自分が情けなく、メグミに対して申し訳ない気持ちになった。



何となくメグミのことを考えながら、

金魚が、ふらふら、ゆらゆら しているのを ながめていた。


そういえば、メグミってなんだか、黒い金魚だ。


ぜったい、赤じゃない。

なんだか 黒い金魚は メグミだ。

何の根拠もなく、俺はそう思った。



黒い金魚は、そんな俺の考えなど

おかまいなしに、すいすいと鉢のなかで、ゆれた。


その上を、ゆうゆうと赤い金魚が ただよっている。


じゃあ、赤い金魚は誰?

当然、そういう疑問が浮かんだが、

赤い金魚が誰かは、わからない。思いつかなかった。





「たっだいまー。」

コトミが、いきおいよく教室に入ってきた。


そのすぐ後から、タクヤもコンビニの袋を手にさげて入ってくる。


「あれ?メグミは?」

コトミが少し、間の抜けた顔をした。


「ああ、さっき金魚鉢の水を換えてて、

 メグミも、もうすぐ戻るんじゃないかな。」



「え。水換えてくれたんだ。大変だったでしょ。


 …………って、よく考えたら、タケルって

 いきものがかりじゃん。当たり前のことしただけやん。」


コトミは、少し機嫌がいい。テンション高めってやつだ。

いつも、テンション高めな気もするが。



タクヤが荷物を机の上に置いて、ひと息つく間もなく


「金魚にエサやろーぜ。エサぁ。」

と、こちらもテンション高めだ。


おにぎりや弁当に、飲み物のペットボトル、それに

お目当ての花火も買ってきたので、

コンビニのビニール袋は3つもあった。




陽が西にかたむいて来て、オレンジ色の光がまぶしく、

西日がやけに暑い。


ひとり、遅れてメグミが教室に戻ってきた。

水の入ったペットボトルを3本かかえている。


「メグミぃ。タケルといっしょに水換えたんやね。

 金魚、元気になったよぉ。

 タクヤがエサやってるし。」


タクヤは、エサをじゃんじゃんあげていた。

それを見てメグミが声をあげた。


「ああぁ、そんなにエサ入れちゃダメだよぉ。水が汚れちゃう。


 そんなにたくさんエサあげたら、金魚がおなかこわしちゃうよぉ。」


メグミはペットボトルを棚の上に置くと、金魚の入った鉢に

近づいて、タクヤをどかすと、鉢のなかの、どう考えても

多すぎだろ。と思われるエサを必死にとり除いていた。



メグミの いっしょうけんめいな すがたが、

なんだか かわいらしく 思えた。



タクヤは、コンビニの袋をまさぐって何か取り出した。


週刊少年マガジンだ。

ジャンプでもなく、サンデーでもない。

なぜだか少年マガジンだ。

どういうわけだか、マガジンだ。



俺はジャンプのほうが好きだ。


女子はだいたい、サンデー派が多い。

チャンピオンは、面白いのに、なぜか、

読んでいるやつは少数派だ。



タクヤはマガジン派か。

ジャンプ買って来てもらえばよかった。


あ、でも今日はジャンプじゃなくて

マガジンの発売日だ。




急にあたりが暗くなってきた。

陽が沈んだのだろうか。


タクヤは、夢中になってマガジンを読んでいる。

その横で、コトミは携帯のメールをチェックしている。


「目が悪くなるぞ。」

俺は、そう言って、教室の明かりをつけた。



いっしょうけんめいメールを打つコトミの

おなかが、ぐぅーーっと鳴った。


すると、メグミの、おなかも

ぐぐぅーっと鳴った。



こういうとき、ドラマやアニメやマンガだと、

その場にいる みんなが笑う。


でも、誰も笑わなかった。




「おなか、すいちゃった。夕飯にしよーよ。」


コトミが携帯をしまいながら言う。



「じゃあ、わたし、手、洗ってくる。」

水にぬれた金魚のエサをさわったので、

メグミの手は、そうとうクサそうだ。




タクヤが机の上に置いたコンビニの袋のなかから、

俺のぶんの、おにぎりと鶏の唐揚げ、ウーロン茶を

取り出そうとして、気づいた。


ウーロン茶がない。



「おい。ウーロン茶は?ウーロン茶がないぞ。」


「ああ、ウーロン茶は売り切れだったから、

 
 メグミと同じのジャワティーにしといたぜ。」


タクヤが答えた。


「えええ。なんでジャワティーなんだよ。

 普通、緑茶買うだろ。そーゆー時は。」


ちょい、かるくキレ気味の俺に、コトミが

なだめるか、なぐさめるかのように言う。



「いいじゃん、メグミとオソロイなんだから。」

「それ、理由になってねーし。」



「なにが、おそろいなのぉ?」

メグミがハンカチで手を拭きながら入ってきた。


「おそろいのジャワティーよ。

 メグミ、いっつもジャワティーだもんね。」



そう言いながら、コトミがスパゲティの容器を取り出した。

次にプラスティック製のフォークを取り出すかと思いきや、

取り出したのは割り箸だった。


「お前、スパゲティなのになんで箸なんだよ。

 ふつう、フォークだろ。フォーク。」

「フォークより箸のほうが食べやすいのよ。知らないの?」

ちょっと、頭に血がのぼってきた。




「おつりは?」

という、メグミの ひとことで 俺はわれにかえった。

「そーだ、2000円もわたしたんだぜ。おつりは?」


「ないよ。」

タクヤは、少しの間もなく言ってのけた。


「花火がけっこう高かったから、

 2000円じゃ、ぜんぜん足りなかったぞ。」



じゃあ、なんでマガジンを買ってきたんだ。


とは、なんか声に出せなかった。



しかたなく、おにぎりをかじる。ああ、しょっぱぁ。

ジャワティーを口に流し込みながら、金魚を見た。


あいかわらず、金魚は水のなかで すずしげだ。

たまに、口をパクパクしている。



外は、すっかり暗くなっていった。

わずかだが、すずしくなったように感じる。


タクヤは、焼肉カルビ弁当にコーラだ。

でっかいサイズのプリンもある。

なんちゅう、栄養の取り方だ。

糖分大好きっこか、お前は。


コトミは、和風山菜卸しスパゲティに、ポカリスウェットと

顔に似合わずさっぱり系。


俺とメグミは、梅干しと鮭のおにぎりにジャワティー、

俺は、それに加えて、たんぱく質の鶏の唐揚げだ。


おにぎりとジャワティーストレート。

文句を言いはしたが、それほど悪くはない。


4人は、だいたい同じくらいで食べ終えた。



まだ、口を もごもごさせているタクヤとメグミを

尻目に、コトミはさっさとゴミを片付けると言った。



「さあ、花火いこっ!花火!花火。」

あいもかわらず、テンション高めだ。

テンションハイヤーだ。



でも、じつは、俺も少し気分が高揚していた。

飯食って体温が上がったからか?


4人は教室を出て昇降口まで無言で歩く。


コトミだけが、たまに、はなび。はなび。と

小声で楽しげに つぶやいた。


上履きを靴に はきかえて 外へ出た。


完全に暗くなっていた。

かと、思ったら、西の空はまだ、明るい。




夏の熱い太陽は、なかなか どいてくれない、とみえる。




俺達は、職員室から見えない、校庭のはしっこの外灯の

下をえらんで陣取った。



コトミが花火セットのなかから、

コメットと名前のついた花火をとりだして、はたと止まった。


「そういえば、マッチ買ってない!買うの忘れちゃったー。

 どうしよう。花火できないよぉぉぉ。」


よぉぉぉ。 の部分が、なんだか、かわいらしい声だった。

ちょっと、萌えた。


「ライターあるぜ。」

タクヤが、さっとライターを取り出した。

普通の百円ライターだ。


「よかったー。花火できる。

 着けて、着けてー。」


コトミは嬉しそうにしているが………、

何で高校生が、百円ライターを常備しているんだ?

タバコしか、ないよな………。


まあ、そのことは言わないでおこう………。


タクヤがコトミの持つコメットとかいう花火に、

ライターを近づけて着火しようと、スイッチをカチカチとまわした。


が、火がつかない。


「あれ?ガスが切れちゃってるかな。」

タクヤの困った顔を想像するが、暗くてよく見えない。


タクヤ、お前。ヘビースモーカーかよ。




そう思った、その時。


「君たち、こんな時間まで何してるの?

 とっくに下校時間すぎてるよ。」


暗がりのなかから声がかかった。

女性の声だが、はっきりと聞こえる大きな声だった。


タクヤは、あわててライターをポケットに隠した。



暗闇のなかから、外灯の明かりの下に女性が出てきた。


きりっとした眉に、すっきりした鼻。

かたちのととのった美しい瞳。

その女性の神秘的な美しさに、俺は

思わず息をのんだ。


髪は黒髪でストレートに、ややクセがついて

肩より少し下あたりまで伸びている。

歳でいったら25、6くらいだろうか。

俺達からみたら、ずいぶん大人の女性だ。


「君たち、こんな時間まで何してるの?」

女性は、もう一度、同じことをきいた。

くちびるは少し紅色をおびていた。


俺は、この瞬間、たしかに恋というものをした。

女性に好意をいだくことを初めて感じた、

ような気がした。




「あ、あの。花火をしたいんだけど、

 ライターの火が………」

「しっ!」


言いかけたコトミに、タクヤが静かに征した。


「え?花火?ライターが、どうしたの?」


女の人は、花火に興味を持ったようだった。


「花火をしたいんですけど、火をつける

 ライターもマッチもなくて困ってたんです。」


俺は、タクヤをかばいつつ、話をすすめた。


ウソをついてしまったが、そんなことは気にしない。


「よかったら、おねえさんも花火しよーよ。


 あ。でも、火がつけられないんだった。」


そう言う、コトミは、けっこう天然系か。



「あたしが、ライター貸してあげるよ。

 そのかわり、おねえさんもまぜてくれない?」



このひともタバコ吸うのか。

でも、このひとはハタチこえてるだろうから合法だな。



きれいな おねえさんは オイルライターを取り出した。

たしか、ジッポとかいうやつじゃないだろうか。

ルパン三世で、次元やルパンが使ってるやつだ。


はじめて実物をみたが、なかなか かっこいい。

べつに、タバコには興味はないが、ジッポには 興味がわいた。


きれいな おねえさんには もっと きょーみが ある。


「あの、俺、タケルっていいます。

 こいつがタクヤで、花火持ってるのがコトミ。

 で、いちばん、ぱっとしない こいつがメグミです。」


「へー、よろしくね。みんなは高校生よね?

 何年生なの?みんな同じクラス?」


俺が、自己紹介したのが よかったのか、

おねえさんは うちとけて 話かけてきてくれた。


話をしながら、ジッポのスイッチをカチっとまわして

ボボッ、と火をつけた。


ライターのオイルの強い かおりのあと、

ほのかに、いいかおりがした。

なんの においだろう?


「俺達、みんな同じクラスで、三年生です。」

においに気をとられてる俺にかわって、

タクヤが答えた。



俺は、思い切ってきいてみた。


「あの………、お名前は?」


「え?あたし、あたしは…………」

おねえさんは、言うか、言わないか、迷っているようだった。



「あ、もし、言いたくなかったら結構です。」

そう言う俺に、逆に安心したのか、


「あたしは、……かぐやよ。変な名前でしょ。」

と、おねえさん、いや、かぐやさんは言った。

暗くて、いまいちよく見えないが笑顔だったに違いない。


その時、ライターに近づけていた、コトミのコメットに

火が着いて、花火がいきおいよく燃えた。


「あっ!」

かぐやさんは、少しびっくりしてライターを引っ込めた。


「あっ、ごめんなさい!

 

 わあぁぉぅ!きれぇぇぇい。」



コメットはピンクとグリーンの火を交互にチカチカさせながら

火花を散らしている。


きれいな花火に、まわりで見ている4人は、黙って見入ってしまった。



暗かったまわりが、花火の火で、ぱっと明るくなった。


暗がりで、かぐやさんの くちびるが 真っ赤に

染まっているのを 俺は、たしかに 見た。


なんか、ドキドキした。




コトミは、はしゃいでいる。

タクヤが、コメットをもう一本取り出して、

コトミの花火から、もらい火をした。



みんなも、それにならおうと、花火を手に手に取った。


俺はタクヤから、メグミはコトミから火をもらった。


コメットは、半分近くまで燃えると、

オレンジとイエローの光にかわった。


いままでよりも、音が激しくなる。


まわりは、よりいっそう、明るくなった。



次々に、新しい花火に火をつけて、

花火が燃えては散っていくのをながめた。




いちど、かぐやさんが、俺の花火から火をもらおうと、

花火を近づけてきた。


そのとき、かぐやさんの 左ほほ、瞳の少し下あたりに、

ほくろがあることに気がついた。


泣きぼくろ とかいうやつだろうか。


そういえば、メグミの 左ほほにも、ほくろがある。



そう、考えていると、メグミが俺の花火から

火をもらおうと、近づいてきた。


花火の光と煙につつまれて、不思議な気持ちになっていた。



「あー、UFOだっ!UFOだっ!」


いきなり、コトミが花火をそっちのけで夜空を指差した。

さらにヒートアップして興奮している。


「見て、タクヤ、UFOだ!」


「ちげーよっ!ありゃ、宇宙ステーションだよ。」


「えっ?UFOじゃないの?宇宙ステーションって、なーに?」


否定するタクヤにコトミが、かわいらしく問いかけた。


「宇宙で実験するためにつくられた、実験塔だよ。

 スターウォーズに出てくるようなやつ。」


スターウォーズに宇宙ステーションなんて出てたか?

実験してたっけか?


「偶然ね。わたしJAXAにつとめてるのよ


 まだ、ぺーぺー、だけど。」


かぐやさんは、いつのまにかタバコを取り出していて、

口にくわえて、あのジッポで火をつけた。



いつのまにか、俺の花火は消えていた。



「火、もらおうと思ったのに消えちゃったね。」

メグミが、ぽつりと言った。





「じゃくしゃ?じゃくしゃってなに?」


また、コトミの天然がでた。


でも、俺もジャクサって何だろう?と思った。



「独立行政法人、宇宙航空研究開発機構。

 J・A・X・A。ジャクサだ。ジャクサ。」

タクヤが、いきなり、すらすらと言ってのけた。

なんなんだ?宇宙航空?

タクヤって、あたまいいんだな。


「へぇー、詳しいじゃない。タクヤ君?だっけ。

 宇宙飛行士でも目指しているの?」


かぐやさんも感心している。

タバコから煙が、ゆらゆらとのぼっていった。



やるな。タクヤ。

ただのマガジン派マンガ少年じゃないんだな。


「宇宙かぁー、オトコのロマンだねっ!」


コトミの読んでるマンガは、

いがいと松本零士大先生の作品か。


そういや、歳のはなれた兄さんがいるみたいだ。


メグミは兄弟や姉妹がいるんだろうか?

あまり、そういうことは話した記憶がない。



「ロマンはオトコだけのものじゃないよ。

 オトコに負けんな。コトミちゃん。」



かぐやさん、かっこいい。男前。





なんだか、みんなで、黙って夜空を見上げている。

これが青春か。オトコとオンナのロマンか。




なんだか、言葉を出すのが ためらわれた。

みんなも同じ気持ちなんだろうか。




かぐやさんが、タバコの火を消しながら、

沈黙をやぶって、気遣いの言葉をかけてくれる。


「そういえば、みんな、もうけっこう夜遅いけど

 だいじょうぶなの?うちに連絡したほうがいいんじゃない?

 お母さんたち心配するよ。」






そういえば、家に連絡するのを忘れていた。



4人が携帯を取り出して、電話をかけはじめた。


「もしもし、母さん?うん。友達と花火してる。

 うん。…え? 夕飯はコンビニで買って食べた。


 うん。……、うん。わかってる。遅くならないうちに帰るから。」


だいたい、4人とも似たような会話なのだろう。


4人とも電話を終えた。


「ねえ。ねえ。メアド交換しようよ。

 4人でメールしない?」

コトミが、メールアドレスを交換しようと言い出した。


「おっ。いいなぁ、それ。みんなでメル友になろうぜ。」

タクヤも乗り気だ。


「えー。」

渋る俺に、意外なところから声がかかった。


「いいじゃない、メアドくらい。交換してあげなよ。」

かぐやさんが、自分の携帯メールをチェックしながら言った。



「じゃあ、かぐやさんもメアド交換しましょうよ。」

俺はダメもとで言ってみた。



「いいわよ。交換してあげる。」

かぐやさんは、あっさりOKした。意外だった。


俺達は、互いにメールアドレスを教えあった。


コトミとメグミは、すでにメル友だったのだろう。

俺と、タクヤは、なぜかメールはやりとりしたことがなかった。



やったー、かぐやさんのメアドゲットだー。

俺は、こころ弾んだ。



メアド交換が終わると、タクヤが打ち上げ花火を

取り出した。


「さあ、メインディッシュをいただきましょう。」


おどけた言葉にも、誰も笑わない。



「どこに火をつけるの?」


ジッポを取り出した かぐやさんに


「危ないから、俺がやりますよ。」

と、声をかけて、ジッポを貸してもらった。


俺も、いいところを見せないと。



花火の筒を、みんなと少しはなれたところに置いて、

火をつけようとした。


打ち上げ花火「メテオ」という種類らしい。


なかなか、うまいこと火が着かないが、

落ち着いてやればできる。


「メテオ、来まぁーす!」



間もなく、一発の火球が、夜空に打ちあがった。


その後も連続で、花火が打ちあがる。



15メートルくらい打ち上がると、花火のかさが開いて

いろあざやかな火のしずくが、円となって真っ暗な空に描かれた。



みんなは、黙って、その場に立ったままみている。

コトミは、落ち着きなく立ったり、しゃがんだりして見ていた。



全部で、十発打ちおえると、花火の筒は静かになった。




「終わった。終わった。

 後はデザートの線香花火だ。」

もう、誰も笑わなくなっていた。

楽しい時間は、あっというまに過ぎていく。




みんなで円になってしゃがんで、線香花火をした。


みんな、押し黙って線香花火のたまを見つめていた。



ぱちぱち、ハジケル。はじける。はじける。

………………………………。

…………ぱち、ぱち………。

………………………ぱちっ。




線香花火のたまが、燃え尽きては落ちていく。




急に、さびしい気持ちがこみ上げた。

みんなは、黙って線香花火を見つめ続けている。


俺は、そんな空気が気に入らなかった。




何か言わなくては、……なにかっ!





「お、俺も……、月へ行きます!」





「え?…………。」




「俺も、タクヤといっしょに、月へ行きます!」



「え、えーっと、次回の月への有人探査の計画は

 まだ、詳しくは未定だけど…。」


かぐやさんの言葉が途切れた。



「未定だからこそ、可能性があるんじゃないですか!

 月探査船かぐやも、月へたどり着いたし!

 いっしょに月へ行こうぜ!タケル!」


タクヤが、また かっこいいこと言った。



「それって、かぐやさんへのアプローチのつもり?」


コトミが、からかい半分に言った。









「あたしも、月へ行く!」










突然のメグミの叫びに、まわりのみんなは度肝をぬかれた。




最後の線香花火のたまが、ぽとり、と落ちた。






田舎町の夜空には満天の星がまたたいていた。















.........Let's stop here for the present this story.       




イメージソング

大塚愛 CDアルバム 

「LOVE JAM」 より

「金魚花火」
















俺達の高校生活、最後の夏は終わりを告げようとしていた。

俺たちの友情は、いつまで続くのだろうか。

そんな不安を感じる俺を、その夜の星達は何も言わず、

ただただ、やさしく見守っているのだった。









…………………… THE END








あとがき


さて、いかがでしたでしょうか。

以前から書いてみたかった、青春ストーリーモノを

書いてみました。恋愛物語と銘打っているけれど、

恋愛は、まだ、はじまったばかり?でしょうか。

ん? 物語の最後に、はじまるのかな?

まだ、はじまってなかったりして。



恒例のイメージソングですが、大塚愛さんのファンなら

予想できたであろう、そう、「金魚花火」です。

CDのおまけについてきたDVDに入っていた、金魚花火の

歌にあわせたショートストーリーを見て、

なかなか良かったので、それに負けない話を

創らねば!と息巻いてみたので、

なかなか、いい作品になったと思います。

歌の歌詞とは少しことなった意味合いのストーリーですが……。


私の高校生時代の実体験をもとに書いてみたのですが、

別に、そんなかっこいい青春をおくっていたわけではなく、

かなり脚色してありますよ、もちろん。

この話は実話ではなく架空のものです。


最近の、話題を盛り込んで、

実際の、月探査の人工衛星、かぐやのことを絡めて書いたので、

話が、なかなかまとまらなくて、何回か書き換えました。

これからも、直すべき所があったら、手は加えるつもりですが、

ほぼ、これで完成です。


なんか、この話の続きをついつい、考えてしまうのですが、

あまりに、きれいにつくってしまったので、

続きを書いてしまって、イメージをこわすのがこわいような気もします。


まあ、でもいいのができたら発表しますけどね。


たまには、大塚愛さんの歌以外でも書いてみようかな。

ああ、でも、大塚愛さんの曲で、またイメージが湧いてきた。

のか?



2010年4月30日

ちょこっとだけ改題しました。



次の作品も、ぜひ楽しみにして待っていてくれますでしょうか?

では、また、ここで、お待ちしておりますので。

さようなら。

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